2010 Fiscal Year Annual Research Report
ドパミン受容体を介した異常行動における統合的なエピジェネティクス解析
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21890281
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
位田 雅俊 立命館大学, 薬学部, 助教 (70512424)
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Keywords | パーキンソン病 / ドパミン神経 / セロトニン神経 / 6-hydroxydopamine / フルオキセチン / L-dopa / リン酸化ヒストンH3 / 線条体 |
Research Abstract |
パーキンソン病は中脳黒室-線条体ドパミン神経の変性・脱落を特徴とし、線条体ドパミン量の低下の起因する錐体外路症状を示す神経変性疾患である。現在のところ、パーキンソン病に対する治療はL-dopaなどを用いたドパミン補充療法などの対症療法が主流である。しかし、慢性的にL-dopaを服用すると約40%ものパーキンソン病患者に精神症状や日内変動といった重度な副作用が生じる。この副作用は、ドパミン神経系だけではなく、セロトニン神経系をはじめとする他の神経系の関与が考えられているが、その分子機序については不明点が未だ多くある。 本研究では、パーキンソン病患者に抗うつ薬として使用される選択的セロトニン再取り込み阻害薬の1つであるフルオキセチンを用いて、フルオキセチンを前投与した6-OHDA投与ラットにおけるL-dopa誘発旋回運動の著しい減少が認められた。また、線条体においてフルオキセチン前投与はL-dopa処置によるphospho-p44/42 MAPK、リン酸化ヒストンH3およびGAD67の増加を抑制した。さらに、セロトニン受容体1AのアンタゴニストであるWAY 100135処置では、前述のフルオキセチンの効果は消失した。しかし、セロトニン受容体1BのアンタゴニストであるCP94253処置では、フルオキセチンの効果は消失しなかった。これらの結果より、L-dopa誘発旋回行動には、障害側の線条体においてMAPK経路を介したリン酸化ヒストンH3の増加などのエピジェネティクス変化が生じていた。また、フルオキセチンは、セロトニン受容体1Aを介してL-dopaによるエピジェネティクス変化を抑制した。これらの結果は、L-dopa誘発旋回行動には、ドパミンおよびセロトニン神経系両者は密接に関与したエピジェネティクス変化が生じていることが示唆された。
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Research Products
(4 results)