2009 Fiscal Year Annual Research Report
多発性硬化症病者に特有の疲労に対する介入プログラムの開発
Project/Area Number |
21890284
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Senri Kinran University |
Principal Investigator |
森谷 利香 Senri Kinran University, 看護学部, 助教 (20549381)
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Keywords | 看護学 / 難病 / 疲労 |
Research Abstract |
本研究の目的は、多発性硬化症(Multiple Sclerosis;以下MS)に特有の疲労に対する介入方法を開発することである。その前段階として平成21年度は、本邦のMS病者の疲労に関する経験を質的研究を行った。病者の支援団体を通じて研究参加者を募集し、9名の病者に疲労の経験に関する半構成的面接を実施した。参加者は女性が6名で、平均年齢は42.3歳であった。データは、Grounded Theory Approachを用いて帰納的に分析した。 結果、【個別的で新たな感覚としての疲労】や【対処の不完全さ】、【疲労の周知不足という前提】といった7つの中核概念が生成された。この中で、疲労がMS病者の生活や自分らしさの保持に支障を来していること、また疲労への対処に専門家による介入や周囲からの理解がなく孤立していることが明らかになった。また、病者の従前の生活を維持するための努力が、疲労の先行要因となることもあった。さらに、予測できない疲労や、対処の「固定されたパターン」によって、病者の生活の健全性が揺らいでいた。これらから、MS病者の疲労に対する理解を深め、専門家へのアクセスの改善、及び病者が疲労をコントロールできる介入方法の開発の必要性が裏付けられた。 これまでの疲労への介入研究は、欧米を中心に行われ、理学療法士などによるEnergy Conservation Courseが主であった。これは、生活の「休息」と「活動」のバランスの見直し、体位の工夫などリハビリテーションの視点から、疲労改善を狙うものである。しかし、今回の質的帰納的研究の結果によって、病者の対処として「固定されたパターン」に基づく生活が束縛感をもたらしていたことや、病者の頑張りが疲労の要因となっていたことなどから、上記のプログラムは本邦において相応しくない可能性が示唆された。研究再開後は、他の方法によって疲労改善に向けた介入方法の検討を行い、実施と評価を行う予定である。
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