2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経可塑性と損傷神経の再生におけるコンドロイチン硫酸の機能解明
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21890286
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
宮田 真路 神戸薬科大学, 薬学部, 特別契約研究員 (60533792)
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Keywords | コンドロイチン硫酸 / プロテオグリカン / 神経可塑性 / 神経再生 / 抑制性神経細胞 / 臨界期可塑性 / 糖鎖生物学 |
Research Abstract |
神経回路は外界の刺激によって機能的、構造的に変化する性質を持つ。この経験依存的な可塑性は、臨界期と呼ばれる時期にのみ存在するが、臨界期の開始と終了を制御する分子機構はよく分かっていない。脳の主要な細胞外マトリックス成分であるコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)は、発生に伴い抑制性神経細胞周囲に凝集し、ペリニューロナルネット(PNN)を形成する。臨界期が終了した成体の脳にコンドロイチン硫酸(CS)分解酵素を注入し、PNNを破壊すると、可塑性が回復することから、CS鎖は臨界期の終了を促すと考えられている。CS鎖を構成するN-アセチルガラクトサミン残基は、4位もしくは6位が硫酸化修飾を受けるが、可塑性における硫酸化パターンの意義は不明であった。申請者は、マウス脳の発生過程において、CS鎖の量は変動しないが、臨界期前後に6位の硫酸化が減少し、4位の硫酸化が増加することを見いだした。そこで、CS硫酸化パターンの変動によって、臨界期が調節されるのではないかと考え、この仮説を検証するため、6位の硫酸化を担うコンドロイチン6-O-硫酸基転移酵素1(C6ST-1)を過剰発現するトランスジェニック(TG)マウスを作成した。C6ST-1 TGマウスの脳では、野生型と比べ6位の硫酸化が増加し、4位の硫酸化が減少しており、硫酸化パターンの変動が遅れていた。野生型マウスでは、臨界期の開始前にPNNの形成が始まるが、C6ST-1 TGマウスではPNNの形成が抑えられていた。C6ST-1 TGマウスは臨界期の終了した成体においても強い可塑性を示した。また、C6ST-1 TGマウスにおいては、抑制性神経細胞の周囲のPNNの形成が不完全であることが分かった。さらに、C6ST-1 TGマウスでは、抑制性神経細胞の成熟に必要なタンパク質の蓄積が低下していた。これらの知見から、CSの硫酸化により抑制性神経細胞の成熟が制御され、その結果、臨界期が終了するという、新規の神経可塑性の制御機構が明らかとなった。
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Research Products
(3 results)