2010 Fiscal Year Annual Research Report
舌正常ケラチノサイト不死化細胞を用いた口腔発癌モデルの作製
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21890287
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Research Institution | Hyogo College of Medicine |
Principal Investigator |
瀬川 英美 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (00553778)
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Keywords | 口腔癌 / HPV / 発癌 |
Research Abstract |
近年、口腔癌では子宮頸癌と同様にハイリスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)の関与が示唆されており、また、最近の報告では、口腔癌におけるハイリスク型HPV陽性の割合は増加傾向を示し40%を超えている。さらにHPV陽性の口腔癌と陰性の口腔癌では明らかに予後が異なることが報告されていることから、異なるメカニズムが検討されている。 われわれはヒト正常舌角化細胞にHPV16型のE6およびE7遺伝子を導入することにより「不死化」に成功した。さらに、この不死化細胞(HTK1-16E6E7)にタバコ特異的ニトロサミンであるNNKとエタノールをin vitroで作用させ、高Ca培地とFBSに適した細胞(HTK1-16E6E7-NNK+EtOH)を樹立した。そこで、NNKおよびエタノールにより不死化細胞が獲得した細胞生物学的変化を染色体分析、cDNAマイクロアレイによって解析し、従来の頭頸部扁平上皮癌の責任遺伝子として報告された結果と照らし合わせ、口腔発癌における責任遺伝子の同定を行った。 その結果、cDNAマイクロアレイによる解析で、HTK1-16E6E7-NNK+EtOHはコントロールであるHTK1-16E6E7と比較するとアクチン調節関連タンパク質であるZyxinの発現上昇が確認された。Zyxinは細胞のadherens junctions(AJs)に存在しアクチン調節を行うことから、細胞の形態変化との関与が示唆されている。一方で、EMT(epithelial-mesenchymal transition)とは上皮系細胞が間葉系細胞に形態変化することにより、細胞の形態が敷石状から紡錘状へと変化する現象であり、最近ではZyxinがEMTに関与することが示唆されている。これらのことから上記2種類の細胞を使用してEMT markerの発現を検討したところ、HTK1-16E6E7では上皮系マーカーであるE-cadherinの発現上昇が認められ、間葉系マーカーであるN-cadherin, Vimentinの発現が認められなかったのに対して、HTK1-16E6E7-NNK+EtOHではE-cadherinの発現消失とともに、N-cadherin, Vimentinの発現上昇が認められた。これらのことから、口腔発癌過程におけるZyxinの発現上昇およびEMTの関与が示唆された。
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Research Products
(1 results)