2010 Fiscal Year Annual Research Report
重症心身障害児の睡眠時における自律神経活動評価と突然死の予防に関する研究
Project/Area Number |
21890289
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
松井 学洋 兵庫県立大学, 看護学部, 助教 (70549211)
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Keywords | 重症心身障害児 / 突然死 / 睡眠リズム / 活動量計測計 / 在宅看護 |
Research Abstract |
重症心身障害児(以下重症児)では、日常的に医療的ケアが必要な例が多く、夜間の睡眠状況に影響を与えている可能性がある。本研究では、ITC社製アクティHR4を用いて、夜間の重症児の睡眠状況と心拍変動の特徴を調べた。対象は身体障害者手帳1級を所持する6~20歳(平均12.1±4.6歳)の重症児18名(男子9名、女子9名)であった。 1、診断名は脳性麻痺が61%と最も多く、44%がてんかんを持っていた。また、72%が抗てんかん薬又は睡眠導入剤を内服していた。肺炎、熱発等の夜間急変の既往がある児は61%であった。2、日中、医療的ケアが必要な児は、口鼻腔吸引5名、気管内吸引4名、人工呼吸器管理2名、胃ろう注入5名であった。夜間測定中に実施された医療的ケアは、口鼻腔吸引1名、気管内吸引4名、人工呼吸器管理2名、胃ろう注入3名であった。3、測定3日間の睡眠指標の平均は、就寝時間22:06±1:01、起床時間7:15±1:02、睡眠時間527±60分、夜間覚醒時間12±23分、睡眠効率97.5±5.4%であった。4、睡眠中の心拍変動と自律神経指標の平均は、BPM:75.7±11.2回/分、IBI:823.9±121.4ms、RMSSD:70.0±31.4、VLF:2436.3±2060.7ms^2、LF:2145.4±1861.7ms^2、HF:1802±1652.1ms^2、LF/HF:1.6±1.2であった。5、日中に口鼻腔吸引が必要な児や夜間に気管内吸引が必要な児では、不要な児と比較して睡眠中のLF/HFが有意に高かった(p<0.01,p<0.05)。また、夜間急変の既往がある児では、既往のない児に比べ有意にHFが低かった(p<0.05)。 重症児では日中夜間の吸引刺激が睡眠中のLF/HFの上昇に寄与している可能性がある。冠攣縮性狭心症では24時間を通してLF/HFが高値になり、夜間から早朝にかけて交感神経活動が亢進すると報告されている。また、冠動脈スパズムは交感神経活動の亢進が関与すると言われており、一般的に発作は早朝覚醒時に起こりやすい。今回の結果から、吸引が必要な重症児では睡眠中も交感神経活動が亢進すると考えられ、夜間に冠動脈スパズムから致死的不整脈を発症するリスクを持つ可能性が示唆された。
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