2009 Fiscal Year Annual Research Report
Neuroligin遺伝子改変自閉症モデルマウスのシナプス機能の解析
Project/Area Number |
21890304
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
田渕 克彦 National Institute for Physiological Sciences, 大脳皮質機能研究系, 准教授 (20546767)
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Keywords | 自閉症 / シナプス / モデル動物 / Neuroligin / Neurexin / 電気生理学 |
Research Abstract |
自閉症患者から見つかった1アミノ酸置換を再現したNeuroligin-3R451Cノックインマウスについて、自閉症症状を引き起こす原因を解明する目的で、このマウスのシナプス機能の解析を詳細に行った。モリス水迷路試験を用いた行動解析により、このマウスで空間学習記憶能力の増強が見られることから、海馬のシナプス機能を電気生理学的手法を用いて解析したところ、抑制性シナプス機能は正常であったのに対し、興奮性シナプス機能の増強が認められた。この結果は、行動学実験の結果と整合性の取れるものであるが、このマウスの大脳皮質のシナプスで抑制性シナプス機能が増強し、興奮性シナプス機能は正常という以前得られた結果と、大きく異なるものである。これは、この変異が単にシナプス機能を一律に改変しているのではなく、脳の領域ごとにそれぞれ異なる様式でシナプスの興奮性・抑制性機能のバランス異常を引き起こしているものと考えられ、これは自閉症の病態を解明する上で重要な知見であると言える。どうしてこのような領域ごとによるシナプス機能の違いを引き起こしているのかを解明するために、neuroligin遺伝子群の脳の各部位での発現パターンをreal-time PCR法を用いて定量的に解析した。しかし、neuroliginの主要なアイソフォームについて、際立った違いは認められなかった。次に、Neuroliginのシナプスにおけるリガンドとして知られるNeurexinの主要なアイソフォームについて発現を調べたところ、脳の領域ごとにかなり異なるパターンが認められた。このことから、Neuroliginは脳の各部位において、異なるNeurexinのアイソフォームと結合するとことにより、シナプス機能の特異性を生み出している可能性が示唆される。次年度は、この意味することをさらに掘り下げて、興奮性・抑制性伝達物質受容体との関連から研究を継続する予定である。
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