2010 Fiscal Year Annual Research Report
Neuroligin遺伝子改変自閉症モデルマウスのシナプス機能の解析
Project/Area Number |
21890304
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
田渕 克彦 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 准教授 (20546767)
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Keywords | 自閉症 / シナプス / 疾患モデルマウス / Neuroligin / 電気生理学 / SDS-FRL法 |
Research Abstract |
本研究は、自閉症患者から見つかったシナプス接着因子Neuroligin-3の単一アミノ酸変異(R451C)をゲノム上で再現した自閉症モデルマウスのシナプス機能について解析し、自閉症の原因との関連を探ることを目指すものである。平成22年度は、前年度に開始したモデルマウスの海馬のシナプスについてさらに詳細に解析を行った。モデルマウスの海馬では電気生理学的に興奮性ジナプス機能の亢進が認められていたが、今回、興奮性シナプス伝達を司るグルタミン酸受容体であるNMDA受容体とAMPA受容体のシナプス応答の比を解析した結果、NMDA受容体の応答が優位に増強していることが判明した。形態学的解析によりに、モデルマウスでは海馬の錐体神経細胞の樹状突起の分枝が増加していることを見出した。また、シナプスの微細形態において、モデルマウスではシナプス小胞の数、シナプス末端の面積、棘突起の面積が減少していることを見出した。凍結割段レプリカ免疫電顕法(SDS-FRL法)を用いた解析により、モデルマウスではシナプス後膜面でのNMDA受容体のNR1サブユニットの密度が増加していることを見出した。H21年度に得られた結果と合わせ、当マウスでは脳の領域によって異なるレベルのシナプスの興奮性・抑制性のバランス異常が認められ、これはシナプスの微細形態や神経伝達物質受容体の局在異常によるものと考えられる。自閉症は症例ごとに臨床像が大きく異なるが、少なくともあるタイプの自閉症では、本研究で見られたシナプス異常に起因する可能性が考えられ、今後自閉症の臨床病理学的研究を行っていく上で、本研究成果は重要な知見をもたらしたといえる。
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