2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規分泌性ホスホリパーゼA2(III型)の欠損が引き起こす脂質代謝異常と病態
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21890310
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
佐藤 弘泰 財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (50546629)
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Keywords | 脂質 / ホスホリパーゼA2 / 生殖 / メタボリックシンドロ |
Research Abstract |
1)メタボリックシンドローム:高脂肪食負荷したsPLA_2-III欠損マウスは、体重および内臓脂肪サイズの減少、脂肪肝の抑制、血中レプチン、グルコース、総コレステロール、LPC濃度の低下、インスリン抵抗性の改善が認められた。sPLA_2-III欠損マウスでは脂肪組織のLPCが減少するとともにマクロファージの炎症マーカーが減少していた。血漿リポタンパク質の粒子径の測定を行った結果、sPLA_2-III欠損マウスでは悪玉小径LDLが減少していることがわかった。このことから本酵素の欠損がメタボリックシンドロームを改善することを見出した。さらにsPLA_2-IIIの脂肪組織における発現部位を特定するために、特異抗体を用いた免疫組織化学染色を行ったところ、sPLA_2-IIIは脂肪組織の間質部の一部の細胞に強い陽性所見が観察された。さらに脂肪組織を脂肪細胞と間質(Stromal vascular fraction : SVF)に分画し、sPLA_2-IIIの発現を定量的PCRで調べた。その結果、sPLA_2-IIIはSVFに高発現しており、脂肪細胞にはほとんど発現していないことが確認された。このうちsPLA_2-IIIがどの細胞に発現しているか調べるために、各細胞のマーカー遺伝子の発現を定量的PCRで調べた結果、前脂肪細胞のマーカーであるPref-1の発現パターンがsPLA_2-IIIの発現パターンと一致していた。このことからsPLA_2-IIIは脂肪細胞の間質に存在し、前脂肪細胞が発現細胞のひとつであると考えられた。さらにsPLA_2-III欠損マウスでは摂食量が減少すること、sPLA_2-IIIは摂食中枢である視床下部に強く発現していること、マウスを一晩絶食させるとsPLA_2-IIIの脳内発現が増加することがわかった。このことからsPLA_2-IIIが中枢においても脂質栄養状態の制御に関与している可能性が考えられた。 2)動脈硬化:動脈硬化モデルマウスであるLDL受容体(LDLR)欠損マウスを用いてsPLA_2-III/LDLRダブル欠損マウスを作成した。今後このマウスに高コレステロール負荷を施した時の動脈硬化の進展について、対照マウス(LDLR欠損マウス)と比較検討する予定である。
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