2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21F20381
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田端 和仁 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50403001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
FAN CATHERINE 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 人工細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
マイクロチャンバーを用いた細胞機能再構成を目標に、核酸複製に関わる酵素群(RCR)をチャンバー内部に再構成することを試みた。様々な実験条件をためしたが、チャンバー内壁への非特異的吸着の影響が大きく、一部酵素が機能しないことがわかったため、RCRが稼働出来る全く異なる微小容器の検討を開始した。その結果、W/Oドロップレットが最も可能性が高いことがわかった。W/OドロップレットでRCRを機能させることが出きれば、将来的にはリポソーム系への発展も期待され、細胞機能を再構成した人工細胞構築にも発展性が期待される。そこで、W/Oドロップレット内でRCR反応の構築を目指した。マイクロメートルサイズのW/Oドロップレットに大腸菌のレプリソームを完全に再構成し、液滴内複製サイクル反応(RCR)システムを開発した。16kbpの鋳型DNAに対して、液滴内RCRシステムは1分子の鋳型DNAから高い成功率(82%)で正のRCRシグナルを得た。一方、208kbpの鋳型DNAからの増幅では、成功率が23%と明らかに低かった。また、W/Oドロップレットのサイズ依存的なRCR反応の成功率に関しても調査したところ、5マイクロメートル以上のW/OドロップレットでRCR反応が認められ、10マイクロメートル程度のサイズではほぼすべてのW/Oドロップレットで反応が確認された。このことは、RCR反応に対してW/Oドロップレットのサイズ依存性があることを示している。本結果は、1分子の鋳型DNAからゲノムサイズのDNAを増幅するプラットフォームを確立し、多数の遺伝子からなるより複雑な人工細胞系を構築する可能性を示した。こんごは、リポソームを用いたRCR反応系の構築を行っていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロチャンバーを使用する当初計画とは異なるが、別のシステムにて同様の結果を得られているため、
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Strategy for Future Research Activity |
1.チューブ内/バルク内 RCR とドロップレット内 RCR の確認 液滴内RCRでは、RCR酵素と緩衝液成分、±DNA、蛍光マーカー色素Alexa 647を含む内部溶液を油と界面活性剤の混合物で乳化する。インキュベーション後、SYBR Green Iで染色し増幅されたDNAを測定する。 2.リポソーム製造の最適化 リポソームの脂質二重層を形成する油脂として、POPCとDOPGの脂質を使用する予定である。また、コレステロールは、脂質鎖のコンフォメーション秩序化に より膜を強化するために使用される予定である。リポソームは、油中水型エマルジョンを油水界面を通過させることで製造する。また、生産さ れるリポソームの数、その品質、堅牢性に影響を与える多くの潜在的なパラメータが存在する。例えば、脂質であるPOPCとDOPGとコレステロー ルの比率、水性センターと外部環境との密度勾配などである。リポソーム製造の最適条件は、実験計画法(DOE)を用いて特定することができ る。DOEは、システムに望ましい反応をもたらすために重要な変数を特定する効率的な手法です。何千もの実験を行う代わりに、目的のリポソ ームを製造するための条件を決定するために必要な実験は100以下である。 3.リポソームにおけるRCRの最適化 リポソーム内の RCR も 30°Cで数時間インキュベートし、同様に可視化し、分析する。さらに、リポソーム中のRCR成功率を最適化するために 、様々な条件を検討する。例えば、脂質の比率を変えて、ホスファチジルエタノールアミン(75%)、ホスファチジルグリセロール(20%)、カ ルジオリピン(1-5%)からなる大腸菌膜を模倣することができる。また、液滴内と同様に 、リポソーム内のRCR成功率はDNAの品質に大きく依存すると思われる。そのため、異なるDNA抽出・精製方法を最適化する必要がある。
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