2021 Fiscal Year Annual Research Report
1D Thermal Transport Dynamics in Quantum Hall Edge Channels
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21F21016
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
遊佐 剛 東北大学, 理学研究科, 教授 (40393813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MOORE JOHN NICHOLAS 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 量子ホール / メゾスコピック熱輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、一次元電子系の量子ホールエッジに沿った熱輸送の史上初の可視化を目的としている。これにより、熱輸送モデルが理論予測した熱分布の特徴を検証し、幅広く注目されている「中性モード」の伝搬の減衰長を測定する。もうひとつの史上初の試みであるQHエッジ中の熱伝搬の速度を測定する。これにより、現在複数提案されていて桁違いに異なる理論予測が区別される。これらの研究結果は、中性モードの物理的起源についての理論を特定し、理論予測している熱伝搬が電荷モードより遅いことを検証する。これにより、朝永-ラッティンジャー液体で起こる「スピン・電荷分離現象」に類似する「熱・電荷分離」という驚異的な現象を明らかにする。 昨年度は、強磁場(1 - 10 T)および低温(< 4 K)下で半導体量子井戸内の二次元電子系の局所電子温度上昇を測る温度計の製作に成功した。さらに、約1 μmのレーザースポットを使用して二次元電子系を加熱し、温度計の位置で発生する温度上昇を検出した。トポロジカル絶縁体の一種である量子ホール系のエッジにおいて、温度信号を加熱位置の関数として測定した。その結果、エッジに沿った電子熱輸送が1次元的に閉じ込められている観察することができた。この結果、低温下で電子熱輸送を1μmの分解能で空間的に可視化する基本的な機能を示すことができた。この機能は、本研究プロジェクトがトポロジカル的に保護された熱輸送のエキゾチックな詳細の解明のために使用する主要な技術である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度、実験で使用する半導体ウェーハのドーピング濃度の最適化が必要になり、実験用の半導体デバイスの作成が計画より2か月間遅れた。ドーピングは、二次元電子系である量子井戸に電子を提供するが、濃度が高すぎると、デバイス表面の金属ゲートが機能しなくなる。 次に、クーロンブロッケード温度測定の目的で、量子ドットデバイスの設計、作成、およびテストで数か月を費やした。特に、ナノスケールのゲートを作成するための電子ビームリソグラフィーと金属リフトオフの条件の最適化に予想以上の時間がかかった。さらに、予備実験としてデバイスを冷却するため使用した冷凍機に問題が発生し、修理に予想以上の時間がかかった。 予備実験の結果、ゲートの下の絶縁層が帯電することで量子ドットが不安定になり、温度計として機能しなくなることが判明したため、クーロンブロッケード温度測定法を諦めることにした。そこでデバイスを設計し直し、熱電温度測定法で電子熱輸送を検出することに成功した。ただし、温度計の信号には、二次元電子熱輸送に由来しない成分がいくつかあることが判明した。熱伝搬緩和長に関する情報を抽出し、弾道熱輸送と拡散熱輸送を明確に区別するために、その他の原因から発生する信号を減らすように実験を調整した
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は変更しないが、今年度は当初の提案とは異なる方法で電子温度測定を行う予定である。量子ホールエッジの局所温度を検出するために、量子ホール系のエッジに接続された狭いゲート領域で発生する熱電電圧を測定する。この温度測定法は、いくつかのグループの研究成果を参考にしており、量子ドット温度測定のように4つ以上のゲートではなく、1つのゲートしか必要としないため、ゲート電位の不安定性に影響されにくいなどの利点がある。ただし、熱電温度測定法は二次元電子の温度に加えて、基板の加熱や光電流から生じる不要な信号も検出してしまうため、不要な信号成分を特定し、可能な限りそれらを取り除くための実験を遂行する予定である。熱伝搬緩和長の測定に成功し次第、物性理論の柴田尚和教授との共同研究により、理論シミュレーションによって解析する予定である。
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Research Products
(5 results)