2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Ionic Liquid based Liposome system and application in siRNA delivery for COVID-19
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21F21051
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
後藤 雅宏 九州大学, 工学研究院, 教授 (10211921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
RAHMAN MD MOSHIKUR 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | 核酸医薬 / 遺伝子送達 / イオン液体 / siRNA / COVID-19 / 遺伝子治療 / リポソーム / ナノキャリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生体適合性の高いイオン液体を用いた核酸医薬送達のための新規ドラッグキャリアの開発とその核酸医薬への応用を目的としている。 新規バイオ医薬品の開発は、その安定性の低さや製剤化の難しさから、依然として大きな課題となっている。イオン液体を用いた薬物送達システムは、これまで抗癌剤であるメトトレキサートのバイオアベイラビリティの改善、抗癌活性の向上、および臓器毒性の低減を実現してきた。本年度は、経皮送達システムにおける有害な原料の使用に代えて、使用材料をミリスチン酸イソプロピル、イソプロピルアルコール、N -メチルピロリドン、ポリエチレングリコールなど医薬的に認められた材料のみを用いてドラッグキャリア(イオン液体製剤)を開発した。 具体的な実験としては、生体安全性の高い脂質ならびに脂肪酸を用いた一連のイオン液体を合成し、生体適合性、薬物動態、組織分布、抗腫瘍効果などを調べ、ドラッグキャリアとしての有用性を検討した。次に、COVID治療薬の アビガンをイオン液体化し、製薬上許容される溶媒との混和性、生体適合性、皮膚透過性、薬物動態を調べ、経口投与が可能なアビガン-イオン液体製剤を調製した。 アビガン含有イオン液体システムは、水溶性、経口バイオアベイラビリティ、長期徐放性、全身毒性が従来の経口薬よりも改善されていることを示した。経口製剤として有効なイオン液体薬剤は、共溶媒/可溶化剤を添加することなく、薬剤学的に認められた原材料を用いて調製し、吸収性の改善の問題に取り組み、バイオアベイラビリティを既存原薬と比較して向上させることに成功した。 今後は、今回開発した生体適合性の高いイオン液体をベースとしたリポソームキャリアを開発し、核酸送達の実現を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオン液体は水や多くの有機溶媒に不溶な難溶解性薬物を可溶化できるという優れた特徴をもつことから、ドラッグデリバリーという薬の送達方法の最適化に関する研究において大変注目されているが、そのコロナ感染症への応用研究は未だ無い。今回、COVID-19の治療薬として期待される難溶解性のアビガンに関して、イオン液体を応用し、経口バイオアベイラビリティ、長期徐放性、全身毒性が従来の経口薬よりも大幅に改善されることを明らかにした。 さらに、イオン液体の薬物応用で最大の課題であった、イオン液体の毒性低減に向けて、脂質と脂肪酸の組み合わせを用いることによって、生体適合性の高いイオン液体を調製できたことが最大の成果である。 さらに本年度は、生体適合イオン液体を組み込んだリポソーム製剤の調整を試みた。具体的には、生体由来材料の中で高い疎水性を示す“リン脂質”を利用することによって、現在までに実現できていない“疎水性の生体適合イオン液体”の合成法を確立した。調製したイオン液体リポソームキャリアに、DNAを封入し、経皮投与によるDNAの皮膚内への吸収促進を確認できた。皮膚内への浸透解析においては、蛍光色素をDNAに結合させ、共焦点顕微鏡で画像解析を行なった。 以上のように、本研究は概ね良好に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、核酸送達への応用という目標に向けて、最適なイオン液体リポソームの創生に取り組む予定である。 前年度の研究成果によって、脂質ベースのイオン液体からなるリポソームを用いると核酸の経皮浸透が促進することを明らかにした。特に、水を大量に含む体内ではイオン液体からなる製剤を水中で利用することは困難であった。このため、“油状製剤”を効果的に活用できる経皮分野へ応用することが最適であると考えられる。そこで、ターゲットとなるsi RNAを対象に、経皮デリバリー(塗り薬)を中心にコロナワクチンへの応用研究を行う計画である。 モデルマウス皮膚で、RNAの浸透挙動を解析し、最も高浸透なイオン液体リポソーム製剤を設計する。別途細胞実験では、導入したRNAのトランスフェクション効率を検証し、最終的にはモデル小動物(マウス)を利用して、経皮ワクチン効果、具体的には、RGDペプチドの発現効率を確認する計画である。
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Research Products
(6 results)