2021 Fiscal Year Annual Research Report
Uncovering the regulatory mechanism of fungal cell-to-cell communication by a novel transglutaminase
Project/Area Number |
21F21099
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸山 潤一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任教授 (00431833)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MAMUN MD. ABDULLA AL 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
|
Keywords | 糸状菌 / トランスグルタミナーゼ / 細胞間連絡 / 麹菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
糸状菌は菌糸状に生育し、隔壁により仕切られた細長い細胞が連なる多細胞生物としての形態的特徴を有する。隔壁には隔壁孔と呼ばれる小さな穴があき、これを介して隣接した細胞どうしが連絡を行っている。この細胞間連絡は、動物のギャップ結合・植物の原形質連絡のような多細胞生物として共通する性質である。これまで糸状菌の細胞間連絡の制御機構について、糸状菌特異的なオルガネラWoronin bodyが物理的にふさいで遮断するという程度の知見のレベルであった。 我々は大規模局在スクリーニングにより同定した糸状菌の細胞間連絡の制御因子のなかから、タンパク質の架橋反応を担うトランスグルタミナーゼドメインをもつタンパク質を見いだした。本研究では、動物で血液凝固や皮膚表皮形成などの機能が知られるトランスグルタミナーゼについて、糸状菌の細胞間連絡の制御メカニズムにおける新しい機能を解明することを目的とした。 2021年度は、トランスグルタミナーゼ活性の細胞間連絡の制御と細胞内局在の解析を行った。最初に、トランスグルタミナーゼ活性の糸状菌の細胞間連絡の制御における機能解析を行った。「トランスグルタミナーゼ様タンパク質」における同酵素で保存されている触媒残基のアミノ酸置換変異体を作製したところ、隔壁孔における溶菌の伝播を防ぐ機能が低下した。さらに、トランスグルタミナーゼ活性の細胞内局在について、人工基質である5-(ビオチンアミド)ペンチルアミンを使用し、トランスグルタミナーゼの架橋活性によってビオチン化された細胞内部位を調べた結果、溶菌時の隔壁孔で観察された。以上の結果から、トランスグルタミナーゼ活性が、隔壁孔における細胞間連絡を制御する機能をもつことを示唆する結果を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は糸状菌特異的に存在する機能未知タンパク質の大規模局在スクリーニングにより、隔壁孔に局在する細胞間連絡の制御因子としてトランスグルタミナーゼドメインを有するタンパク質を見いだした。そこで、糸状菌の細胞間連絡におけるトランスグルタミナーゼの生理機能を解明する。 2021年度は、トランスグルタミナーゼ活性の細胞間連絡における機能および細胞内局在の解析を行った。最初に、細胞間連絡の制御におけるトランスグルタミナーゼ活性の機能解析のために、「トランスグルタミナーゼ様タンパク質」における同酵素で保存されている触媒残基について、アミノ酸置換変異体を作製した。細胞間連絡の制御の表現型については、「低浸透圧ショック」による溶菌誘導時に隣接する細胞が隔壁孔をふさぎ溶菌の伝播を防ぐ割合で評価した。その結果、アミノ酸置換変異体において、隔壁孔における溶菌の伝播を防ぐ機能が低下した。 トランスグルタミナーゼ活性と細胞間連絡制御との関連をさらに調べるため、蛍光顕微鏡による酵素活性の細胞内局在を解析した。人工基質である5-(ビオチンアミド)ペンチルアミンを使用して、トランスグルタミナーゼの架橋活性により基質タンパク質をビオチン化した。蛍光プローブで標識したストレプトアビジンによってビオチン化タンパク質の局在を可視化したところ、溶菌時にトランスグルタミナーゼ活性が隔壁孔に検出された。 以上からトランスグルタミナーゼ活性について隔壁孔での細胞間連絡の制御への関与を示唆する結果が得られ、糸状菌においてはこのような報告はない。 2022年度は、人工基質5-(ビオチンアミド)ペンチルアミンを用いて、トランスグルタミナーゼの基質タンパク質の探索を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、トランスグルタミナーゼの基質の探索および機能解析のために、以下の実験を行う予定である。 我々の大規模局在スクリーニングで明らかにした多数の隔壁孔局在タンパク質について、トランスグルタミナーゼの作用を受けるか検討する。最初に、「トランスグルタミナーゼ様タンパク質」をコードする遺伝子の破壊によって、隔壁孔局在タンパク質の局在への影響を解析する。隔壁孔への局在が消失したタンパク質について、人工基質である5-(ビオチンアミド)ペンチルアミンを使用し、トランスグルタミナーゼの架橋活性によってビオチン化を受けるかを調べる。ビオチン化された場合、ストレプトアビジン結合ビーズを用いて精製する。トリプシンにより消化したペプチドをLC/MS/MSで解析し、トランスグルタミナーゼ基質において架橋反応を受けるグルタミンを特定する。これに対するアミノ酸置換変異体により、隔壁孔への局在および細胞間連絡の制御機能への影響を調べる。 トランスグルタミナーゼの基質タンパク質について、5-(ビオチンアミド)ペンチルアミンを用いた架橋反応により同定する。溶菌の際に、トランスグルタミナーゼの架橋反応によって基質タンパク質がビオチン化されることを利用して、ストレプトアビジン結合ビーズを用いて精製する。トリプシンによる消化後、ペプチドをLC/MS/MSで解析、その質量データから麹菌のタンパク質配列データベースを参照して同定する。同定されたトランスグルタミナーゼ基質タンパク質の候補について、GFP融合タンパク質として発現させて溶菌時の隔壁孔への蓄積の有無、遺伝子破壊株を作製して細胞間連絡制御への影響で評価する。
|