2021 Fiscal Year Annual Research Report
Fundamental research for the development of therapeutic strategies for cerebral white matter infarction using iPS cells
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21F21114
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
定方 哲史 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (90391961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
XU BIN 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2023-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 血管内皮細胞 / 大脳白質梗塞 / 再髄鞘化 / オリゴデンドロサイト前駆細胞 / 統御性T細胞 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにヒトiPS細胞(iPSCs)から分化誘導した血管内皮細胞(iVECs)をラット大脳白質梗塞モデルの白質梗塞巣に移植すると、歩行障害が改善され、梗塞巣が縮小し、脱髄軸索の再髄鞘化が劇的に促進されることを見出している。またこの時、髄鞘を作るオリゴデンドロサイトの前駆細胞(OPCs)の数が増加し、炎症反応が劇的に抑制されることも見出している(Xu, B., Kurachi, M., Shimauchi-Ohtaki, H., Yoshimoto, Y., Ishizaki, Y.J. Neurochem., 153: 759-771, 2019)。本研究ではiVECsが大脳白質梗塞を改善する分子細胞基盤を明らかにしたい。 iVECs移植による炎症反応抑制作用が大脳白質梗塞改善をもたらしているかどうかを検証する。さらにiVECs移植による炎症反応抑制作用が制御性T細胞(Tregs)を介したものか否かを明らかにする。またiVECs移植により大脳白質梗塞巣においてTregsが増加する場合は、その分子機構を明らかにし、iVECs移植によるOPCs増加にTregsが関与するか否かを明らかにする。iVECsが分泌するエクソソームが培養OPCsの生存を促進することを明らかにしているので、エクソソームに含まれるOPCs生存促進因子を同定する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1. iVECsをラット大脳白質梗塞モデルの白質梗塞巣に移植すると、対照群に比べてED-1+炎症細胞とCD4+T細胞が減少する(すなわち炎症反応が抑制される)一方で、Foxp3+ Tregsが増加し、白質梗塞巣における脱髄軸索の再髄鞘化が促進された。リンパ節内に免疫系細胞を隔離する作用を持つFTY720処理により、炎症反応は顕著に抑制されたが、iVECs移植によるTregs増加及び白質梗塞巣の再髄鞘化促進効果は認められなくなった。すなわち炎症反応抑制それ自体は白質梗塞巣における脱髄軸索の再髄鞘化には寄与しないことが明らかになった。 2.我々は既にiVECs移植によりオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPCs)の数が増加することを明らかにしているが、FTY720処理により末梢免疫系細胞の脳内侵入を阻害してもiVECs移植によるOPCs増加は抑制されなかった。すなわちiVECs移植によるOPCs数増加にTregs等の免疫系細胞は寄与しないことが明らかになった。 3.移植されたiVECsが白質梗塞巣にTregsをリクルートする分子機構の解明を目的に、Tregsに対する走化性因子のiVECsによる発現を検討したところ、iVECsがCCL22を発現することを蛍光免疫染色で、培養液中にCCL22を分泌することをELISAで確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1.FTY720処理により内因性Tregsが認められなくなった白質梗塞モデルラットに、健常者の末梢血から調製したTregsを移植し、白質梗塞巣における脱髄軸索の再髄鞘化が促進されるか否かを検討する。 2.これまでの研究からiVECsが大脳白質梗塞巣へのTregsのリクルーティングを行うことが明らかになり、リクルーティングを誘導する分子の有力候補としてCCL22が浮上したので、iPSCsをCRISPR法によりゲノム編集し、CCL22の発現を抑制した上でiVECsに分化誘導し、そのiVECs移植によりTregsの梗塞巣への集積が起こらなくなるか否かを検証する。 3.iVECsの培養上清からエクソソームを調製し、含有されるタンパク質を質量分析により解析する。この中にOPCsの生存因子として知られるPDGFやIGFが存在する場合、それらの信号分子に対する中和抗体が、iVECs由来エクソソームの培養OPCsに及ぼす生存促進効果を阻害するか否かを検討する。中和抗体が阻害効果を持つ場合は、これらの信号分子がエクソソーム膜表面に存在する可能性が高いので、これらの分子に対する抗体を用いた免疫電子顕微鏡法で検証する。 4.iPSCsをCRISPR法によりゲノム編集し、1で明らかにした信号分子の発現を増強させた上でiVECsに分化誘導し、その培養上清からエクソソームを調製、このエクソソームの培養OPCsに及ぼす生存促進効果がこれまでのiVECs由来エクソソームに比べて大きいか否かを検証する。
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