2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of efficient photocatalytic CO2 reduction by metal complexes bearing PNNP ligands
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21F21338
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
斎藤 進 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (90273268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BAE SEONGHEE 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2021-11-18 – 2024-03-31
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Keywords | CO2 / 光還元 / イリジウム錯体 / PNNP配位子 / フェロセン / HCO2H / 電子移動 / 光励起 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規なPNNP配位子としてferrocenyl(Fc)基をビピリジンの4,4'位に一つずつもつFc-PNNPを合成した。この新規なPNNP配位子をもつ(Fc-PNNP)Ir錯体(Fc-IrPCY2)の合成にも成功した。Fc-IrPCY2を用いるCO2の可視光還元反応が効果的に進行する反応条件を種々検討した。その結果、Fc-IrPCY2 (20 μM), BIH (0.1 M) を含むCO2飽和MeCN溶液を用いて400 nm以上の波長をもつ可視光照射下でCO2光還元反応を行なったところ、TON >2000、HCO2H形成の選択性89%でCO2還元が進行することを見出した。Fc-IrPCY2は自己光増感型のCO2光還元触媒であるため、別途光増感剤を加えて光反応を行う必要はない。そこでFc-IrPCY2の光物性を詳細に調べるため、UV-vis吸収測定や過渡吸収分光測定を含めて各種スペクトル測定実験を行った。その結果、非常に長い光励起寿命種が観測された。これはFc-IrPCY2の光励起によってMLCTが起こりFc-IrPCY2の光励起種(Ir*)が生成した後に、2つのFc基からIr*への分子内電子移動(LMCTもしくはLLCT)が起こった結果、見かけ上のIr*の寿命が長くなったためだと考えられる。光照射されたFc-IrPCY2のEPR測定によってFc基のFeの1電子(ラジカル)種が見られたことからも、FcからIr*への分子内電子移動が一部支持された。今後ピコ秒過渡吸収分光測定などを細かく反応条件を変えて行い、詳細に電子移動の機構を調査していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
もともと様々な(PNNP)Ir錯体を光励起した場合、光反応系中に過剰にある高濃度のFcでその励起状態が効果的に消光されることは確認していた。そこで今回、FcがPNNP配位子にあらかじめ導入された(PNNP)Ir錯体(Fc-IrPCY2)を合成し、FcからIr*種への電子移動が分子内で起こるように細工した場合、(PNNP)Ir錯体の光物性がどのように変化するかについて単純な興味を持って本研究を行った。その結果、Fc-IrPCY2について非常に長い光励起寿命が観測された。さらに興味深いことに、まだ反応の機構などの詳細は明らかではないが、わずかな光でさえも反応溶液からほとんど遮断されるような反応条件でFc-IrPCY2と犠牲還元剤を用いて同様のCO2還元反応を行った際にも、Fc-IrPCY2の熱励起もしくは極めて微量の光量による光励起されるなどして、CO2還元が進行した形跡がある。何度も再現実験を行ったがいずれも同じ反応時間ーTON直線が得られたため、比較的信頼できる実験データではないかと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Fcから光励起(PNNP)Ir錯体への非常に興味深い分子内電子移動が確認されたため、PNNP配位子の二つのFcのFe殻が混合原子価状態になっている可能性が高い。またIr殻も含めればFc-IrPCY2は3つの金属中心を持つため、それら3金属中心間での電子移動による複雑な混合原子価状態の平衡になっている可能性もある。それらの興味深い動的電子状態の詳細をより明らかにするとともに、今後は(PNNP)Ir錯体に限らず、Ir以外のさまざまな金属殻Mをもつ(PNNP)M錯体へと、これまでに得られた知見や実験・分析方法を応用していく予定である。Mとしては5d-ブロック元素に限らず、積極的に4d-や3d-ブロック金属も活用していきたい。実際に現在Bae博士はFc-(PNNP)Re錯体の合成をほぼ完了した段階にある。嵩高いMesityl基をFc基の代わりにもつMes-RePCY2錯体の合成にも成功した。今後これら異なる2種のRe錯体を比較してFc基をもつ(PNNP)M錯体の固有の光物性を明らかにしていくとともに、Fc基にしかなし得ないCO2還元特性を創出していきたい。
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