2021 Fiscal Year Annual Research Report
市街地に基礎の持続的使用に向けた既存杭が新規杭の挙動に及ぼす影響評価
Project/Area Number |
21F21349
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田村 修次 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (40313837)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LI HONGJIANG 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2021-11-18 – 2023-03-31
|
Keywords | 残置杭 / 支持力 / 水平抵抗 / 相互作用 / 引抜孔 / スライム / 先端抵抗 |
Outline of Annual Research Achievements |
杭基礎の発展によって,近年,埋立地で超高層建物の建設が可能になった。しかし,現在,残置杭が大きな問題になりつつある。残置杭とは,建物を建替えする際,前の建物の杭基礎のことである。この残置杭の処理として1)解体撤去,2)地中に残置,3)再利用の3つの選択がある。杭の解体撤去するケースでは,そのコストは杭新設コストより高く,応力開放による地盤の乱れが懸念される。また,杭を抜いた穴を埋戻しても以前と同じ地盤にはならない。杭を残置するケースは問題の先送りであり,数世代後に杭の新設が困難になる。杭を再利用するケースでは,残置杭の健全性・耐震性や新規建物の構造計画の制限などが問題になる。 本研究は,市街地における基礎の持続的使用に向けて,1)解体撤去後の埋戻しが新規杭の支持力に及ぼす影響,2) 地中に残置した杭が新規杭の地震時挙動に及ぼす影響を,実験および数値解析で検討した。「残置杭撤去後の埋戻しが新規杭の先端抵抗に及ぼす影響」では,まず,地盤の拘束圧依存性を考慮し,地盤を加圧した状態で杭基礎モデルを鉛直載荷する実験システムを設計・制作した。次に,引抜孔の底部に沈殿したスライムを油粘土で模擬し,スライムと杭先端との位置関係をパラメータにして杭基礎の鉛直載荷実験を行い,スライムが新規杭の支持性能に及ぼす影響を検討した。「残置杭が新規杭の地震時挙動に及ぼす影響」では,まず,遠心載荷実験を3次元FEM解析で再現解析を行い,解析の妥当性を検証した。次に,新規杭と残置杭の間隔,杭頭の回転拘束条件をパラメータに3次元FEM解析を行い,残置杭が新規杭の水平抵抗に及ぼす影響を検討するとともに,その簡易評価式を提案した。これらの研究成果は,英文Journal paper,地盤工学会大会,日本建築学会大会に,各1編投稿している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年度は,残置杭撤去後の埋戻しが新規杭の支持力に及ぼす影響および残置杭が新規杭の水平抵抗に及ぼす影響を検討対象とした。「残置杭撤去後の埋戻しが新規杭の先端抵抗に及ぼす影響」では,加圧土槽を用いて杭基礎の鉛直載荷実験を行い,スライムが新規杭の支持性能に及ぼす影響を検討した。Case 1 は,新規杭のみのケースである。Case 2 は,引抜孔の底部と新規杭の先端が同じ深さを想定し,油粘土を新規杭の先端と隣接,かつ同じ深さに設置した。Case 3 は,新規杭が引抜孔の底部よりも1D 深いケースを想定し,油粘土を新規杭の先端から1D 上に隣接して設置した。なお,引抜孔径(スライムの直径)は油粘土の直径は杭径と同じ,スライムの厚さは新規杭の杭径の20%とした。油粘土の粘着力c,変形係数E50は,油粘土の温度から評価した。その結果,油粘土と新規杭の高さが同じケースでは,杭頭荷重が 30~36% 低減した。また,新規杭の先端が油粘土より 1D 深いケースでは,杭頭荷重が11~13% 低減することを示した。 「残置杭が新規杭の地震時挙動に及ぼす影響」では,まず,杭が残置された砂地盤における杭基礎の遠心場水平載荷試験結果に対し3次元FEM解析で再現解析を行い,解析の妥当性を確認した。次に,砂地盤において新規杭と残置杭の間隔,杭頭の回転拘束条件をパラメータに3次元FEM解析を行い,残置杭が新規杭の水平抵抗に及ぼす影響を検討した。その結果,残置杭によって新規杭の水平抵抗が増加することを示した。ただし,残置杭が新規杭の水平抵抗に及ぼす影響は,新規杭と残置杭の間隔および杭頭の回転拘束条件に依存する。そこで,杭間隔および回転拘束条件を考慮して新規杭の水平抵抗を評価する簡易評価式を提案した。簡易評価式は,3次元FEM解析結果と概ね対応することを示した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度では,残置杭撤去後の埋戻しが新規杭の支持力および水平抵抗に及ぼす影響を検討する。まず,残置杭の引抜孔底に溜まったスライムに着目し,スライムが新規杭の先端抵抗に及ぼす影響を検討する。スライムは軟弱な油粘土で模擬し,新規杭の先端と油粘土の位置関係をパラメータにして実験する。砂地盤の拘束圧依存性を考慮し,加圧土槽を用いて新規杭の鉛直載荷試験を行う。これにより,スライムが新規杭の先端抵抗に影響を及ぼさない間隔,杭先端の深度差を明らかにする。次に,残置杭撤去後の埋戻しが新規杭の水平抵抗に及ぼす影響を,埋戻しの有無,埋戻し土の物性,引抜孔と新規杭の位置関係をパラメータに,3次元FEM解析で検討する。この数値解析で最重要なパラメータを把握したうえで実験計画を作成し,遠心載荷実験を行う。以上から,残置杭撤去後の埋戻しが新規杭の支持力および水平抵抗に及ぼす影響の定量的な把握を試みる。 当初の計画では,遠心載荷実験は,東工大で実験を行う予定であった。しかし,2021年秋に東工大の遠心載荷装置が故障して使用できない状態となっている。そこで,遠心載荷実験は,京都大学防災研究所で行う予定である。
|