2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on the Development Strategies of Japanese Cultural Soft Power
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21F21712
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
砂山 幸雄 愛知大学, 現代中国学部, 教授 (00236043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
YU XIANGPING 愛知大学, 国際問題研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2021-11-18 – 2023-03-31
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Keywords | ソフトパワー / ポップカルチャー / ファンサブ / 字幕組 / クールジャパン / メディア報道 / 日中関係 / ドキュメンタリー番組 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究分担者の来日が遅れたうえに、2週間の隔離期間もあり、実質的な研究期間は4カ月と短くなった。この間に研究分担者は、研究計画にしたがって、まず愛知大学図書館の所蔵図書資料およびデータベースを活用して、日本におけるソフトパワー研究、とりわけソフトパワーとしての日本のポップカルチャ研究に関する研究資料を精力的に収集した。また国立国会図書館においても雑誌資料の収集につとめ、中国では得られない資料を得ることができた。 研究分担者は、これらの資料を基に日本のアニメやテレビドラマなど1990年代から2000年代にかけて中国で人気を博した番組が、どのようにして中国の視聴者のもとに届けられるかに着目し、中国の大学生を中心とした若者の自発的な字幕制作活動(ファンサブ)に焦点を当てた研究を進め、これらの若者が、「草の根」クールジャパン(民間の自発的な日本文化の発信と受容)の受容者であると同時に、中国国内での発信者でもあったという点を明らかにした。この研究の成果は2022年度に論文として発表する予定である。 一方、研究代表者は、研究分担者の研究を補完する見地から、近代日本をめぐる「ソフトパワー」研究の動向を調査し、研究分担者と共有した。また、重要なソフトパワーとして日中関係に大きな影響を及ぼすメディアの報道の問題に関し、ドキュメンタリー制作にかかわる現場の関係者を含めた対談およびインタビューを実施し、雑誌『中国21』に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究分担者は当初予定の来日時期が大幅に遅れたため、2021年度の実質的研究期間は4カ月弱しかなかったが、この間に愛知大学図書館所蔵資料及びデータベースを活用して、関連資料を大量収集することができた。予定では資料調査のために東京、関西の図書館・研究所等を訪問する予定であったが、コロナ感染拡大等の事情もあり、実現したのは国立国会図書館のみであった。しかし、そこで関連する雑誌資料を複写することができ、一定の成果を得た。研究分担者はさらに、日本のアニメ制作に関連する施設等、中国において日本のソフトパワーの発信源として認識されている各スポットを訪問して、中国でとらえられているイメージと、実際の現場との異同について知見を得た。 研究分担者はこれらの資料を利用して、中国国内で着手していた日本のアニメ、テレビドラマの字幕制作活動に関する研究を発展させ、2021年度末に原稿初校を書き上げた。研究代表者はこれにコメントを寄せた。 一方、研究代表者は、メディア報道をソフトパワーの一環としてとらえ、日中双方の相手国に関する報道の問題を取り上げた座談会を企画し、現役ジャーナリスト、ドキュメンタリー番組制作者、メディア研究者とともに討論に参加した。同座談会は『中国21』の特集号に掲載された。また、同特集号には中国で活躍する日本人ドキュメンタリー監督へのインタビュー記事(インタビューアーは研究代表者)も掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は民間の自発性に依拠した「草の根」クール・ジャパンの展開について、主に中国国内の「字幕組」の活動を実証的に研究した。2022年度は、この研究をさらに継続して深めるとともに、「草の根」クールジャパンから国家戦略としてのクール・ジャパンに転換した後の日中双方の動向に重点を移して研究する。その際、とくに昨年度来の課題で十分展開できなかった以下の諸点に留意する。 1)日本におけるソフトパワー研究の全体状況を把握するとともに、とりわけクール・ジャパン戦略としてのインバウンド振興や現代の日本書の翻訳出版を対象とする研究者と積極的に交流し、研究成果を吸収したい。 2)日本の現代中国研究において、中国の文化的ソフトパワーはどのように研究され、どのように評価されているのかを、受け入れ研究者と研究分担者が協力して調査、分析し、中国国内でのソフトパワー論と比較することを並行して進めていく。 3)日本の文化的ソフトパワー研究に関する書籍、論文、資料の収集をおこなう。所属する愛知大学図書館のデータベースを活用して集中的に調査するほか、国立国会図書館、国立公文書館、国文学研究資料館、国際日本文化研究センターなどが所蔵するインバウンド振興、日本書の翻訳出版に関する多様な資料を包括的に調査し、必要な資料を収集する。とくに、日本政府だけでなく、地方自治体、各種団体、企業などさまざまなレベル・領域で展開されている活動に着目して、資料収集を行う。注目すべき事例については、関係者に直接インタビューして、資料として蓄積する。 .
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Research Products
(2 results)