2021 Fiscal Year Annual Research Report
文化実践の多元性と境界の変容・融合に関する研究 -文化的オムニボアとは何かー
Project/Area Number |
21H00498
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
片岡 栄美 駒澤大学, 文学部, 教授 (00177388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村井 重樹 島根県立大学, 地域政策学部, 准教授 (00780230)
川崎 賢一 駒澤大学, グローバル・メディア・スタディーズ学部, 教授 (20142193)
南田 勝也 武蔵大学, 社会学部, 教授 (30412109)
瀧川 裕貴 東北大学, 文学研究科, 准教授 (60456340)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 文化評価 / 文化的オムニボア / 文化資本 / テイスト / ブルデュー / 象徴闘争 / 文化社会学 / 計算社会科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目にあたる2021年度は、複数回の研究会を開催して研究の方向性を再検討・共有し、以下の研究を推進した。 (1)文化的オムニボアおよび文化資本に関する海外の先行研究を中心に、精力的に検討整理した。ポスト・ブルデュー理論の代表であるリチャード・ピーターソンの文化的オムニボア仮説に刺激をうけた多くの研究成果については、片岡が詳しく検討し、理論的意義や応用としてのさまざまな実証研究を詳細に検討し、論文を執筆した。村井は、新興文化資本についての理論的検討を行い、論文を執筆した。 (2)様々なジャンルの文化活動や文化実践に対する人々の文化評価に関する質問紙調査を作成し、Web調査により全国規模で3月に実施した。データは数値化され分析を開始した。(3)SNSに関する1年分のビッグデータの内容に関する分析をエキスパート複数名と研究者で実施し分類した。これによりSNSの世界でつぶやかれている文化の内容と傾向についての準備作業が終了した。(4)瀧川は計算機科学から文化社会学へのアプローチが可能であることを検討した。(5)ブルデュー理論やポスト・ブルデューの理論を応用したプロジェクトメンバーのこれまでの研究成果をまとめる作業を始めた。理論的なまとめとその応用として、いくつかの文化ジャンルでの応用研究のまとめを行うべく、作業を進行させた。(6)大学生へのインタビュー調査を実施し、かれらの文化テイスト、文化実践、集団内の相互作用について量的・質的データを用いて分析した。これは片岡が実施し、若者における文化的な象徴闘争について日本社会学会で学会報告を行った。(7)過去データを分析し、ライフスタイルとしての「場所」へのテイストに関する社会学的な検討を行い、論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)申請時に予定していた研究内容のうち、文化評価に関する調査を先行して実施できたことによる。(2)またブルデュー理論やポスト・ブルデュー理論に関する世界的な動向を把握し、整理して、片岡および村井がそれぞれ別の角度から、論文を執筆したことで、研究の方向性が明確化できた。(3)SNS関連のビッグデータ分析に着手できたこと、および計算社会科学から文化社会学へと貢献するアプローチを検討できたことは、今後にとって有益であった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)2021年度に実施した文化評価に関する全国調査データを用いて、文化の階層性や人々の文化に対する知覚・認識図式の分析を展開し、論文を共同で作成する。これにより高級文化、大衆文化など正統性の高低を算出する。文化のジャンル別に、音楽、読書、動画、スポーツ、ゲーム、アニメなどの多様なジャンルにおいて、どのような文化評価と知覚・認識図式があるかを社会学的に分析する。さらにこの文化評価調査から、各文化実践の文化威信スコアを算出し、過去に調査したデータと組み合わせることで、より精緻な分析を進めていく。 (2)文化実践と文化テイストに関する新しい調査方法を開発し、調査を実施する。文化的オムニボアの多様性に関して、文化的オムニボアのハビトゥスをさらに解明することで分類することを目的とする。 (3)芸術文化と大衆文化・商品文化におけるジャンル間の象徴的境界の実態を、いくつかのジャンルについて明らかにする。 (4)文化消費パターンの時系列的変容について、過去データと新しいデータで比較し、理論的検討を加える。 (5)Z世代やデジタル・ネイティブに関する先行研究を整理し、また調査でも検討することで文化消費や文化テイストに関するどのような変容があるのかを探っていく。 (6)計算機科学から文化社会学のテーマにアプローチする方法論をさらに検討し、本研究課題との接合を行い研究を進める。 (7)家族と文化、ハビトゥス、教育の関連についても、コロナ禍で起きている問題や変化について、インタビュー調査を実施し、検討する。 (8)計算社会科学から文化社会学的テーマへのアプローチ方法を開発する。
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