2022 Fiscal Year Annual Research Report
How effective are the new type of rural communities with migrants against aggregate shocks? A Case Study of the 2015 Earthquake in Nepal
Project/Area Number |
21H00701
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
橘 永久 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (70301017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加治佐 敬 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (50377131)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自然災害 / 村落共同体 / 海外出稼ぎ / 人的資本 / ネパール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、農業に替わり海外出稼ぎ者からの送金が主要所得となった新形態の途上国村落共同体が、自然災害等の外生ショック発生時に、共同体構成メンバーに対して相互扶助に基づくセーフネットを提供しているか、を検証することである。既存研究は、居住地の近接性に基づく伝統的村落共同体が、病気やケガといった家計固有のショックに対して、暗黙の助け合いを通じたセーフティーネットをかなり効率的に提供する一方、大規模自然災害のように共同体構成員のほぼ全員に影響する集計ショックに対しては、あまり対応できないことを示してきた。新形態の共同体は、海外出稼ぎ者の存在ゆえに、集計ショックに対してセーフティーネットを提供し得る可能性がある。しかし、例えば農作業時の村落内共同作業の重要性が低下することに伴って、家計固有ショックに対する相互扶助の機能は弱体化している可能性がある。 本研究は、2015年にネパール中間山地帯の中西部を襲った大地震を自然実験と見なすことで、新形態の村落共同体の保険機能を統計的に検証する。その最大の強みは、ネパール政府から、山間部11郡での2016年全戸被災調査の個票を使用する許可を得たことである。70万軒を超えるこのデータ内の家計を出来る限り多く再調査し、被災からの回復時にどれほど海外からの送金又は新たに出稼ぎ者を送り出すことに依存したかを明らかにする。コロナ禍に伴う現地研究協力機関の調査員不足のため令和4年度分の予算を一部繰り越し、令和5年度に72か村での調査を実施した。全研究期間を通じて、政府統計からランダムにサンプルした142か村で、710家計の調査を終えることができた。ランダムサンプリングの結果、対象142村落に、2015年大地震が集計ショックであった村落(全戸の7割以上が全壊)と家計固有ショックに近かった村落の双方が十分に含まれている。今後速やかに分析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍終了に伴い、各国の研究機関が現地調査をほぼ一斉に再開したことにより、共同研究のパートナーであるネパールの現地研究機関が、調査員不足に陥ってしまった。そのため、令和4年度の調査規模を、令和3年度の繰り越し分のみを用いた70か村・計350軒に縮小せざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度予算の繰り越しを認めていただけたので、その分も合わせ、令和5年度の乾季期間中に予定していた調査を終えることができた。2015年ネパール大地震で甚大な損害を被った中間山地帯の11郡の約70万戸から、総計142か村内の710戸を再調査することができた。今後速やかに結果の分析を進める予定である。
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