2021 Fiscal Year Annual Research Report
階層的ボラティリティ・共歪度・共分散の資産価格への影響の分析
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21H00727
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
大橋 和彦 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (50261780)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本多 俊毅 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (70303063)
中村 信弘 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (90323899)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 分散リスクプレミアム(VRP) / 歪度リスクプレミアム(SRP) / 確率ボラティリティ / 自己・相互励起ジャンプ / 低リスク・アノマリー / 最適ポートフォリオ / パラメータ推定誤差 / 曖昧さ回避 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、分散リスクプレミアム(VRP)と歪度リスクプレミアム(SRP)の研究を行った。確率分散および状態依存型自己励起的ジャンプモデルを構築し、複数限月のVIXとSKEW指数を用いてVRPは負、SRPは正であることを実証した。COVID-19の影響が顕著に現れる2020年3月末のVRPは、ジャンプ項からのより大きな影響を含むことが定量的に示された。低リスクアノマリーに関しては、個別企業のCDSを分析する研究を、ハザードレートモデルに個別企業固有の要因で発生する自己励起的ジャンプを取り入れたモデルを構築し、日本および欧州の企業について良い適合度をもつことを確認した。複数の資産の収益率間の共変動とその変化の分析については、株式や債券の共分散構造の変化の推定、および共分散構造の変化を企業間の取引関係データを用いて分析した。共分散の推定について推定時に生じる誤差の問題も大きいため、投資家がパラメータ推定に対して持つ曖昧さ(ambiguity)を回避しようとする行動に注目し、資産価格データから計算される投資家の曖昧さ回避行動に関する理論分析を進め、学術雑誌への投稿を行った。 2022年度は、VRPとSRPについてリターンと確率分散の相関であるレバレッジ・パラメータに確率的な時変構造を入れたモデルを開発し、実証研究を行った。また、複数の資産間でのVRPの相互依存関係をモデル化し、VRPの波及効果を研究した。特に、株式と原油間のVRPの相互関係に関する論文を学術雑誌に掲載した。低リスクアノマリーの研究について、動的ベータモデルを仮定した日本株の分析を行った。複数の資産の収益率間の共変動の分析については、株式や債券の共分散構造の変化の推定、および共分散構造の変化を企業間取引関係データから捉える分析を行った。また、投資家の曖昧さ回避行動に関する理論分析の論文を学術雑誌に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、突発的事象を自己・相互励起型ジャンプ過程で定式化し、VRPや信用リスクに占める影響を定量的に分析できるモデルや分析プログラム等の開発を進め、歪度リスクプレミアムに関しても研究成果を得た。低リスクアノマリーに関しても、日本および欧州の企業について実証研究を行っている。複数資産の収益率間の共変動とその変化の分析についての実証研究は問題点の発見という側面も強かったが、投資家のパラメータ推定誤差に対する曖昧さ回避行動については分析が順調に進んでいる。 2022年度は、VRPとSRPについてレバレッジ・パラメータに確率的な時変構造を入れたモデルを進展させ、自己励起型ジャンプモデルを用いて平常時と混乱時における特徴を分析した。また、複数の資産間でのVRPの相互依存関係を分析し、関連論文を学術雑誌に掲載した。さらに、低リスクアノマリーの研究について、動的ベータモデルを仮定した日本株の分析を行った。一方、複数の資産の収益率間の共変動とその変化の分析については、株式や債券の共分散構造の変化の推定、および共分散構造の変化を企業間の取引関係データから捉える実証分析を進めると共に、資産価格データから計算される投資家の曖昧さ回避行動に関する理論分析の論文を学術雑誌に掲載した。 このように研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、低ベータ・アノマリーに関して、VRPとSRPを併せて分析できるより一般化した確率分散ジャンプモデルを構築し、ジャンプ強度過程を確率分散依存型や自己励起的なものに拡張するモデル化に焦点をあてつつ、共歪度や信用リスクおよびベータ変動のリスクプレミアムの双方のアプローチから分析を進める。第二に、開発した共和分関係がある複数の資産間でのVRPの相互依存関係のモデルを用いて、株式とコモディティの間のVRPの伝播の構造を分析する。第三に、資産収益率の分散・共分散の時間変動について、資産価格データやデリバティブ価格データなどに分析データの範囲を拡張し、投資家がパラメータ推定に対して持つ曖昧さ(ambiguity)を回避しようとする行動から、投資家の曖昧さ回避行動と資産間の共分散構造の変化を検証する。
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