2022 Fiscal Year Annual Research Report
Wettability control of textiles using atmospheric plasma jet treatments
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21H00811
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Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
後藤 景子 奈良工業高等専門学校, 校長, 校長 (30243356)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 靖之 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 総括研究員 (00416330)
安川 涼子 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 准教授 (30646633)
山田 裕久 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (90469073)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大気圧プラズマコーティング / 大気圧プラズマ酸化 / 濡れ制御 / 超撥水/超親水モザイクパターン / スマートテキスタイル |
Outline of Annual Research Achievements |
防汚素材開発に関して、ポリエステル織布を用いて実験を行った。APPJ処理に先立ち、加工剤処理した布に汚れを付着させた。綿布で汚れを拭きとった時の除去性を表面反射率変化から求め、電子顕微鏡による画像と併せて検討した。乾いた綿布、水でぬらした綿布、界面活性剤水溶液でぬらした綿布の順に除去性が向上した。しかしながら、ポリエステル布のぬれ性と汚れの除去性の明確な関係は認められなかった。 APPJコーティング剤としてヘキサメチルジシロキサン(HDMSO)に加えて、ヘキサメチルジシラサザン(HMDS)およびオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の検討を行った。HMDSを用いてAPPJコーティングを行うと超撥水化されることがわかった。一方、TEOSを用いた場合、1度のコーティング処理ではやや親水化されたが、回数を重ねると疎水化が進み、10回処理で超撥水表面が得られた。FT-IR測定より、HDMSOおよびHDMSではSi-(CH3)xのモードが確認されていた。また、SEM観察より、いずれのサンプルにおいても数十~数百レベルの緻密な膜が形成していることがわかった。とくにTEOSにおいては回数を重ねる毎に表面の粒子密度が高くなった。以上の結果より、表面の親水化にはSi-CH3などのアルキル基の残存に加え、表面形状が強く影響していることがわかった。 高分子表面に金属膜を形成し金属配線として使用する場合には,密着性が課題になる。今年度は高分子へ表面へのシリカ系密着層形成法として火炎ラジカル法について検討した。APPJコーティングと同様にシロキサン系化合物を出発材料とし,シリカ微粒子の塗布を試みた。基板と試料間の距離,および火炎ラジカルの照射速度は形成するシリカ粒子の付着量,および密着性に影響し,処理条件の最適化により難接着材料であるポリプロピレンの接着性が向上できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
市販APPJ酸化装置の改良により, APPJコーティングとAPPJ酸化の両方が簡便に行える装置を試作し,テキスタイルやフィルム表面の処理を行った。処理表面に対する水の接触角測定の結果から、処理によりぬれ性の著しい変化が起こり、超撥水化や超親水化が確認された。APPJ処理前後の表面の形態や化学組成について、X 線光電子分光分析(XPS),フーリエ変換赤外分光(FT-IR), 電解放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM), 走査プローブ顕微鏡(AFM)などで調べた結果、ぬれ性の変化を説明する結果となった。 また, APPJコーティング/APPJ酸化またはAPPJコーティング/エキシマ紫外線酸化併用処理により, 超撥水/超親水濡れパターンが形成されることが確認でき, 微粒子の局所コーティングや微細配線形成を行うための基板の作成が完了した。 APPJ処理により布のぬれ性を制御することで、付着した汚れを拭き取るだけで除去できる防汚素材開発に向けて実験データを積み重ねてきた。しかしながら、拭き取り過程で固体汚れの粒度分布や付着状態が変化し、拭き取り効果が正確に把握できない可能性を示唆する結果となった。今後、実験方法の改良が必要である。 現在、これまでに得られた実験データを精査し、研究の目的を達成するために必要な実験計画の見直しと実験データ収集の準備を行なっているところである。現段階では成果発表に必要な実験データが不足しており、コロナ禍も重なって研究成果が十分得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
APPJ処理と薬剤処理を行ったポリエステル織布を用いて実験を行う。布に汚れを付着させる方法として、実在系に近い空気中からの付着を試み、防汚試験とする。さらに、汚れの粒度分布や付着状態への影響が少ない汚れ除去方法を検討する。除去前にAPPJ酸化により布と汚れの同時親水化を行った場合も併せて、除去試験を行う。ポリエステル布に付着した汚れの観察や付着量を評価する方法として、ハイパースペクトルカメラを用いた布上の汚れの付着状態のミクロ観察を行う。防汚性や除去性に関するAPPJ処理の有効性を検証する。 多様なコーティング剤を用いた際のAPPJコーティング/APPJ酸化処理へ与える影響を確認し、超撥水/親水化機構を検討することで超撥水性/超親水性モザイク表面処理技術を確立する。超撥水/超親水濡れパターン形成を行う場合は、超撥水部分と超親水部分の境界がクリヤーなエキシマ紫外線酸化処理を用いることにする。パターン形成を行わない場合は, 超親水化のレベルが大きいAPPJ酸化処理を引き続き用いることにする。 スマートテキスタイルや新規機能材料開発の基盤技術へのチャレンジを行う。パターン形成を行った超撥水性/超親水性モザイク表面に, 微細回路形成するための導電性インク塗布技術について検討をおこなう。また, この表面に選択的機能性被膜を形成するために, 機能性粒子をコーティング剤に配合してAPPJコーティングを試みる。
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