2021 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Relationship Value and Reconciliation from the Micro-Macro Perspective
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21H00931
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大坪 庸介 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80322775)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 昌宏 愛知医科大学, 医学部, 講師 (00533960)
多湖 淳 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80457035)
大平 英樹 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90221837)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 和解 / 関係価値 / コミットメント・シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、本研究課題のテーマである関係価値と和解に関する研究を進めるマテリアル作成も兼ねて、謝罪と赦しに関するシナリオ実験とコミットメント・シグナルに関するシナリオ実験をいずれもオンラインで行った。 謝罪と赦しに関するシナリオ実験では、シナリオ作成に加えて、関係価値が十分に高く将来の裏切りが考えにくい関係では、謝罪は最小限のもので済む可能性(逆に言えば、コストのかかる手の込んだ謝罪が必要とされるのは、関係価値が必ずしも高くなく、さらなる裏切りを相手が予期している場合だけである可能性)を検討した。その結果、予測は支持されず、どのような関係性であってもコストのかかる手の込んだ謝罪の方が誠意の知覚を高め、赦しを促すことが示された。この結果は、Letters on Evolutionary Behavioral Science誌に掲載決定している。 謝罪やコミットメント・シグナルを通じて関係価値を調整することを検討するシナリオ実験も実施した。ここでは、特に、コミットメント・シグナルに絶対的にコストがかかっているかどうか、かかっているならばそれがシグナル発信者自身にとってどれくらい大きなコストになっているかを操作した。しかし、この実験では、絶対的・相対的という2種類のコストの操作が完全にはうまくいかず、その結果、仮説は支持されず、シナリオ作成という意味でも課題を残すものとなった。今年度、改めてこの課題を克服するマテリアルを作成し、データ収集予定である。 また2021年度には、これまでの関係価値と和解に関する知見をレビューする形でまとめた書籍も出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験課題の作成は、2つの実験のうち一方がうまくいかなかった。そのため、関係価値に関するシナリオ実験課題を作り直す必要があるが、問題点は明確になっており、その点を改善して新たに研究を行う準備が進んでいる。 また、具体的な研究として実施していないが、研究データの解析で必要となる強化学習モデルやネットワーク分析については、先行研究のレビューを進めており、R及びPythonでの分析コードの準備も行っている。そのため、上記のシナリオの問題点を克服し、新たにデータを取り直すことで、今年度の課題にも順調に取り組むことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、次の3つの点を重点的に検討する。①対人的関係価値が相手から自分に向けられる注意の程度に応じて決まるという先行研究の知見をもとに、実際の友人関係で自分に注意を向けている相手ほど関係価値が高いと感じているかどうかを検討する。②個人レベルでの対人関係の価値更新を測定する実験、国際関係での価値更新を測定する実験を行い、それぞれの価値更新(動的プロセス)を記述する計算論モデルを構築する。③また、友人関係ネットワークについては、相手からの注意のような心理的要因だけでなく、ネットワークの構造そのものによって関係価値が規定されている可能性がある。そこで、このネットワーク構造が関係価値に及ぼす効果の測定を試みる。 ①については、現実の友人関係のデータを匿名性を保持した状況で収集し、分析を行う。具体的には、友人同士で相手に最近起こったことをどの程度把握しているかを報告してもらい、相手が自分に起こった出来事を把握している程(相手が自分に注意を払っている程)、相手の関係価値を高いと見ないしているかどうかを検討する。 ②については、上記のシナリオ実験の課題改善後、個人レベルの関係価値更新、集団レベルの関係価値更新を測定する実験を実施する。また、集団レベルの関係価値としては、国家間の関係価値と和解に関して現実の政治的謝罪データベースの分析を通じて、国際関係に即した関係価値モデルを構築することを目指す。 ③については、エゴセントリックなネットワークと各ノードに当たる友人の価値を報告してもらうことで、ネットワークの構造と関係価値の関連を調べる。
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Research Products
(2 results)