2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Relationship Value and Reconciliation from the Micro-Macro Perspective
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21H00931
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大坪 庸介 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (80322775)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松永 昌宏 愛知医科大学, 医学部, 講師 (00533960)
多湖 淳 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80457035)
大平 英樹 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (90221837)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 関係価値 / 和解 / 政治的謝罪 / コミットメント問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、主に以下の3つの研究を実施した。 個人レベルでの関係価値の更新モデルとして、Hackel et al. (2015 Nature Neuroscience)のモデルを参考に関係価値の更新を表現する強化学習モデル及びそのモデルを検討する実験パラダイムを作成した。具体的には、Hackel et al.の独裁者ゲームを用いた社会的2腕バンディット課題を参考に、自分自身を信頼してくれる相手(関係価値の高い相手)を選択する信頼ゲーム版社会的2腕バンディット課題を考案した。そして、その課題において仮説通りの関係価値更新が行われると仮定した場合のパラメータ・リカバリ・シミュレーションを行い、おおむね想定通りに信頼に基づく関係価値と報酬に基づく関係価値を重みづけるパラメータを推定可能であることを示した。 集団レベルの関係価値の検討として、現実の政治的謝罪が国家間の関係価値と関連しているという洞察を政治的謝罪データベースから得たため、同データベース内の2つの政治的謝罪(好意的/非好意的反応を引き出した謝罪)をシナリオとして、それらの謝罪がそれぞれの国家間の現在の関係価値という文脈のない状況でも好意的/非好意的反応を引き出すかを検討した。その結果、現実の文脈なしではそのような反応を引き出すことがないことがわかった。この結果は、社会・政治心理学の国際誌に投稿し審査中である。 集団レベルの関係価値の規定因として特定のパートナーや価値観へのコミットメントが考えられる。そこで、企業の謝罪が特定の顧客や価値観にコミットしている程度を伝えるコミットメントシグナルとして機能するかどうかをシナリオ実験により検討した。結果はシナリオ間で一貫してコミットメントシグナルの効果を示していたが、その効果量は謝罪の実装方法により変動することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体として見ると順調に進展しているが、個人レベルの関係価値更新のモデル構築はやや進展が遅れている。これは、モデル作成で参考にしたHackel et al.研究がディセプションを使用していたが、本研究では極力ディセプションを排除するために実験課題の利得構造を工夫する必要があり(具体的には架空のプレイヤーではなく実際のプレイヤーがこちらの想定に近い選択をしてくれる利得構造を作り、Hackel et al.実験ではコンピュータプログラムで実装されていたパートナーの行動を実際の参加者の行動とする)、それに想定以上の時間がかかったためである。この問題は2022年度でクリアされたため、2023年度には実験を実施する。 国際関係における関係価値の検討は、想定よりもやや早いペースで進展しており、すでに1本の論文が投稿・審査中となっている。ただし、そこで得られた結果は、現実の文脈が関係価値の検討において重要ということであり、今後、現実の文脈を考慮した課題を作成する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、昨年度の研究を継続し、主に以下の3つの検討を行う。 Hackel et al.の実験パラダイムを利用して作成した実験課題を用いて、オンラインの行動実験を実施する。行動実験のデータを用いて人々が相手が自分を信頼してくれることに基づく関係価値と相手が自分自身に与える報酬の大きさに基づく関係価値をどのように重みづけるかを検討する。Hackel et al.では単なる報酬の大きさ以上に社会関係の価値が重視されることが示されている。同様の結果が再現される場合、fMRIを用いた関係価値更新を担う脳部位の特定(眼窩前頭皮質が候補である)を目指す。 政治的謝罪文脈で重要となる関係価値の検討としては、日韓の関係をとりあげ、日韓でうまくいく可能性がある謝罪及び融和策をシナリオ実験により探る。例えば、政治学者のJennifer Lindは過去の悲劇を共同で記憶に残すことを効果的な和解方策として提案している。日韓でこのような共同記憶作成がうまくいくかどうかを検討する。 組織の謝罪に見られるコミットメントに関して、どのような条件がどのような実装方法を有効なものにするのかを詳しく検討する。
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Research Products
(1 results)