2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21H00963
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田中 雅史 早稲田大学, 文学学術院, 専任講師 (20835128)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | キンカチョウ / 模倣学習 / 文化伝達 / 歌 / 音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人類の文明発展にも寄与したと考えられる文化伝達のプロセスを理解するため、ヒトと、ヒトのように自発的に音声の模倣学習を行う能力をもつキンカチョウという鳥を対象として、長期的に新奇な歌を伝達させる実験を行っている。初年度は、キンカチョウを対象に、パフォーマーとなる成鳥のオスのキンカチョウが歌っている映像を録画して、自由なキー押しによってリズムを変調した鳥の歌とともに視聴させることで文化伝達を引き起こした。学習された歌を分析したところ、一部の発声の模倣は見られたものの、全体的な歌の伝達効率が、対面で行われるキンカチョウの文化伝達に比べて、概して低いことが明らかになった。一方、幼少期にヒトの給餌で育てられたキンカチョウは、キンカチョウの自然な歌からかけ離れた電子音であっても、そのリズムやピッチ、音色に一定の模倣学習が可能であることが明らかになったため、次年度からは、学習方式として、キー押しによる自発的な文化伝達に加え、トリよりも統制が容易なヒトとの社会的相互作用を加えた条件を追加し、また、伝達させる刺激としては、キンカチョウの歌を改変した音声に加え、より分析が容易な電子音を追加することで、キンカチョウの文化伝達を多角的に分析する予定である。ヒトの文化伝達の実験については、いまだ予備伝達実験を行いながら文化伝達の音声・映像刺激の作成を進めているところであるが、次年度には、新奇な文化として伝達させるための刺激を用意して、第3世代までの文化伝達の完了を目指す予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度はヒトの文化伝達実験について他研究機関での極めて類似した研究成果の報告を受けて刺激作成や実験手続きの再検討を余儀なくされており、当初予定されていた第2世代までのヒトの文化伝達実験を遂行できなかったが、2022年度にはできるだけ早期に刺激作成を完了させ、ヒトの文化伝達実験を開始することを目指す。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度も、初年度に行っていた文化伝達実験を継続し、ヒトを対象とした文化伝達実験では、今年度に他研究機関から類似の研究の報告があったことを受け、今後の研究計画が重複しないように十分注意した上で、パフォーマーの映像と新奇な刺激音声の作成をできるだけ早期に完了させることを目指す。その後、日本語話者のパフォーマーの歌を、あらかじめ録画されたパフォーマーの映像とともに実験参加者(18歳以上の日本語話者)に呈示することで、この新奇な歌を第3世代まで伝達させることを目標とする。 キンカチョウを用いた同様の文化伝達実験では、あらかじめ録画されたパフォーマーとなる成鳥のオスのキンカチョウが歌っている映像を、キンカチョウの歌を変調した刺激もしくは電子音とともに呈示する。ただし、2022年度は、映像のみでは十分な文化伝達が生じない可能性に鑑み、社会的相互作用という新しい要因を導入することで伝達効率を高めることも検討しつつ、新奇な歌を第4世代まで伝達させることを目標とする。 これらの実験と並行して、ヒトとキンカチョウの歌において体系的な音響解析を行い、どのようなシラブル、音程、またそれらのシークエンスや、リズム、テンポ、音量変化などが、世代を超えて伝えられやすい文化的形質かを明らかにする。また、ヒトやキンカチョウの脳活動、筋活動、心拍、呼吸といった生体応答を記録することで、文化伝達と関連する生体指標の探索を行う。
|
Research Products
(1 results)