2022 Fiscal Year Annual Research Report
Proton dynamics of proton-conducting solid electrolytes revealed with ultrafast spectroscopy
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21H01015
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永井 正也 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 准教授 (30343239)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥山 勇治 宮崎大学, 工学部, 教授 (80613281)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | プロトン伝導型固体電解質 / 中赤外分光 / テラヘルツ分光 / 酸化セリウム / 光励起発光測定 / 欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では次世代の燃料電池の固体電解質として注目されているジルコン酸バリウムBa1-xMxZrO3-δの電荷担体であるプロトンのミクロな伝導機構を、超短光パルスを用いた超高速分光を用いて解明する。有極性液体の水素結合ネットワーク研究における超高速分光の手法を適用し、固体電解質中のOHO結合を介したプロトン伝導ダイナミクスを中赤外光パルスとTHzパルスを用いることで調べる。当該年度は異なるドーパントのジルコン酸バリウムに対して室温で中赤外から遠赤外領域における反射スペクトル測定を行い、プロトンドープによってフォノン近傍の応答が劇的に変化することを見出した。この研究と平行して、研究グループ内で既に整備されているテラヘルツ分光装置に高強度の中赤外光を入射できる実験系を新たに構築し、3μm で10 μJの出力が得られることを見出した。 前年度には副次的にジルコン酸バリウムの紫外光照射発光の温度、ドーパント、加水量、グレインサイズ依存性を系統的に測定し、酸素欠損に由来する発光がドーパントの影響を強く受けることを見出した実験を行った。当該年度にはこの実験と相補的情報が得られる光励起スペクトル測定を行い、ドーパントのイオン半径に応じて欠陥の電子状態を特徴づけるゼロフォノン線が変わることを見出した。これらは発光および光励起スペクトル測定が固体電解質の欠陥の局所構造を調べるツールとして有効であることを示している。一方で本研究の出発点である酸素伝導型固体電解質安定化ジルコニアと同じ結晶構造を持つ酸化セリウムに対しても同様の実験を行った。しかし明確な応答の変化は見られなかった。これはセリウムの4f電子の寄与が欠陥に大きく寄与するためで、発光測定の固体電解質への適用範囲を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はプロトン伝導型固体電解質の中でもYドープおよびSc ドープのジルコン酸バリウムにおいて様々なドープ量や水の固溶量における光励起発光測定、THz分光および赤外分光を行うことで、個別のOH基の配向緩和およびOH振動モードについて調べた。また中赤外ポンプTHzプローブ分光における実験系の構築を行っている。光源に関するトラブルが起こって一時的に中断をしたもののおおむね順調に推移したと考える。一方で本年度は昨年見出した発光による欠陥同定をジルコン酸バリウム以外の固体電解質(酸化セリウム)においても適用し論文発表も行った。したがって当初の計画以上に進展している部分もあると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果から、YドープおよびScドープのジルコン酸バリウムにフォーカスして様々なドープ量や水の固溶量における光励起発光測定、THz分光、赤外分光を行い、個別のOH基の配向緩和やOH振動モードについて調査する。またレーザーのトラブルの解決を見込んだことから、当初の計画通りに中赤外ポンプTHzプローブ分光の実験を遂行する。
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