2021 Fiscal Year Annual Research Report
Generation of coherent phonon-anglular-momentum state by using light and terahertz wave
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21H01018
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
是枝 聡肇 立命館大学, 理工学部, 教授 (40323878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 康裕 立命館大学, 理工学部, 講師 (50432050)
野竹 孝志 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 研究員 (70413995)
大野 誠吾 東北大学, 理学研究科, 助教 (70435634)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フォノン角運動量 / フォノンスピン / フォノン渦 / テラヘルツ波 / 誘導ラマン散乱 / 円偏光 / 光渦 |
Outline of Annual Research Achievements |
物質中の原子の振動の量子であるフォノンは,これまでエネルギーと結晶運動量のみを担うものと考えられてきた.しかし,最近の研究によって,フォノンがスピンや軌道の角運動量を持ち,非磁性体においてもフォノンが磁性を担うことなどが明らかになってきた.フォノンのスピンや軌道角運動量は,光のスピン(円偏光)や軌道角運動量(光渦)と交換をすると考えられるため,フォノンに共鳴する円偏光・光渦のテラヘルツ波や,円偏光・光渦を用いた誘導ラマン過程によって,角運動量を持ったフォノンをコヒーレントに励振できるものと期待される.本研究は,光とテラヘルツ波を駆使して,フォノンスピン,フォノン渦のコヒーレント励振すること,および,これらと磁気的な素励起との協奏による新しい物性の開拓を目的とする. 2021年度の研究実績概要は,(i) 円偏光誘導ブリルアン散乱のセットアップがほぼ完了したこと,(ii) 長波長用ラマン分光システムの構築を進めたこと,(iii) α水晶におけるパルス誘導ラマン散乱の実験に着手できたこと,(iv) 円偏波テラヘルツ波・テラヘルツ波渦(vortex)発生・制御の理論的理解が進み技術的にも目処がついたこと,などが挙げられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
立命館大学では,円偏光誘導ブリルアン散乱のセットアップがほぼ完了した.α水晶における音響フォノンモードのうち,原子振動の偏波面がフォノンの進行方向を軸として螺旋を描くモード(TAモード)はスピン角運動量を担うと考えられる.そのため,このようなフォノンモードを誘導ブリルアン散乱過程によってコヒーレントに励振することを計画している.2021年度は1064nmのCW近赤外光の対向入射によって音響フォノンの誘導ブリルアン利得分光を実施可能な光学系の準備を進めた.また,自然ラマン散乱実験においてはしばしば励起光による試料からの蛍光が問題となることが多く,本研究でもこの問題に対処するため赤色光励起のラマンシステムを新たに構築した. 理化学研究所仙台支所では,α水晶におけるパルス誘導ラマン散乱の実験に着手できた.試料としては,立命館大学から右水晶と左水晶の単結晶板を提供し,円偏波した1064nmの近赤外パルスレーザーを試料に入射した.後方に散乱された3.8THzのラマン散乱パルスの偏光特性を,波長板や体積ブラッグ回折格子などを組み合わせて検出するシステムを構築した.現在の所,検出感度または光学系の調整段階であり有意なシグナルの検出には至っていない. 東北大学では,テラヘルツ波に対する偏光制御,テラヘルツ波渦の発生機構の開拓を試みており,2021年度はテラヘルツ近接場観察系の構築を進めた.すでに構築してあるTHz時間領域分光装置と組み合わせて,テラヘルツ波の円偏波や光渦の発生を高度に制御するための理論的理解が進み技術的にも目処がついた.
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Strategy for Future Research Activity |
立命館大学では,α水晶に対する円偏光誘導ブリルアン散乱によって,音響フォノン(TAモード)のコヒーレント円偏波フォノン状態(コヒーレント・フォノンスピン)の励振にトライする予定である.また,新たに構築した赤色光励起円偏光自然ラマン散乱分光により,蛍光の影響を受けにくいフォノン角運動量の分光スペクトルを取得していく計画である. パルス誘導ラマン散乱実験では,α水晶に対し,1064nmの近赤外光だけでなく,散乱光の検出感度が比較的高い532nmの可視光パルスによる励起も計画しており,これらの円偏光誘導ラマン散乱実験を同時に進めていく.レーザー光源と光学系は理化学研究所仙台支所にて構築されているが,南出氏(理研)の協力によって,今後も野竹氏(2022年度より石巻専修大学)や是枝(立命館大学)が理化学研究所仙台支所に赴いて実験を続けることが可能となる見込である. 東北大学では,テラヘルツ波に対する偏光制御,テラヘルツ波渦の発生機構の開拓を試みる.2022年度も前年度に引き続き,テラヘルツ近接場観察による基礎データの取得を行い,東北大で構築してあるTHz時間領域分光装置と組み合わせて,テラヘルツ波の円偏波や光渦の発生を高度に制御し,フォノンスピン・フォノン渦状態の制御実験へと応用していく計画である.
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