2022 Fiscal Year Annual Research Report
分子クーロン爆発に伴う新奇負イオン生成ダイナミクス
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21H01055
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
間嶋 拓也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50515038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺本 高啓 大阪大学, 放射線科学基盤機構, 特任講師(常勤) (40467056)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イオンビーム / MeV重イオン / 高強度レーザー / 負イオン / クーロン爆発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、高エネルギー重イオン衝突において新たに確認されている新奇な負イオン生成過程のメカニズムを解明することを目的に、解離イオンの運動エネルギーと放出方向の相関関係を解析できる3次元運動量画像分光システムを構築し、高エネルギー重イオン衝突に伴う分子の解離ダイナミクスや各解離イオン種の生成断面積の情報を得ることを目指して研究を進めている。高エネルギーイオンビームを用いた実験は、申請者の所属専攻で維持管理している1.7 MVタンデム型コッククロフト・ウォルトン加速器を用いて行った。本年度はまず、本加速器に既設のビームラインの一部を全面的に組み替えた。これまで実験に用いていた分析チャンバーを取り外し、昨年度に新たに設計・製作したチャンバーと分析装置を設置した。システムの稼働テストとして、アルゴンや水分子を用いた測定を行い、信号取り込み回路の試験などを行った。この試験測定によって、予想外の不純ピークが現れることもわかった。これと並行して、既存の分析チャンバーをビームラインの下流側に設置して利用できるようにし、生体関連分子であるアデニンなどの各種の核酸塩基分子から生成される解離イオン種の分析も行なった。複数の負イオン種の生成に加え、新たな遅延解離チャンネルを見いだした。また、研究分担者を中心に、高強度レーザーパルスを用いる実験の準備も進めた。リフレクトロン型飛行時間質量分析システムの構築が完了し、ナノ秒紫外レーザーによる多光子イオン化実験まで成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していたビームラインの組み直し、新チャンバーと分析装置の設置、ビーム通しとシステムの稼働テストを予定通り実施できた。また、既存のチャンバーの下流への移動とそれを用いた生体分子試料の測定は、想定以上に進展した。高強度レーザーを用いた実験もおおむね計画通りに進展した。データ保存ソフトウェアの開発やデータの解析手法を完全に確立するまでは至らなかったが、全体としておおむね順調に進展したものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、本年度に新たに明らかになった不純ピークを取り除くため、スペクトロメーターの一部の改良を行い、その改善をはかる。また、本年度に完了しなかったデータ保存ソフトウェアの開発を引き続き行い、コインシデンスデータの解析手法を確立させる。その後、目的の標的分子である水分子に対する測定を行い、解離ダイナミクスのデータを取得する。また、下流ビームラインに移動して利用している既存の分析装置での測定もさらに継続し、核酸塩基やアミノ酸分子などの生体関連分子を初めとして様々な多原子分子からの負イオン種の測定を進め、分子種に対する依存性を幅広く調べる。高強度レーザー実験では、本年度に構築したシステムの改良を行なうとともに、高強度レーザーによる負イオン計測を試みる。
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Research Products
(9 results)