2021 Fiscal Year Annual Research Report
Study of Nonequilibrium and high-density QCD using Hamiltonian formalism
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21H01084
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
日高 義将 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (00425604)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早田 智也 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 助教 (50762655)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ハミルトニアン形式 / ゲージ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
非平衡QCDにおける小さい系での熱化の問題に取り組んだ.まず,SU(2)ゲージ理論をSchwingerボソンの手法を用いて定式化した.SU(2)ゲージ理論は,表現が比較的単純であるためGauss law拘束条件を解いて物理的なヒルベルト空間を具体的に構成するのが容易である.その手法をリンク変数が12個からなる小さな系に適用し,実時間発展をシミュレーションした.ヒルベルト空間の次元を約8700万次元に近似し,初期状態を強結合極限の真空に選び,シュレディンガー方程式を解くことで実時間のシミュレーションを行った.小さい系であるが,この系は熱平衡状態への緩和を示した.物理量であるウィルソンループの挙動から,我々の初期条件では,その緩和時間は結合強度に依存せず,平衡状態の温度Tを用いて2π/Tと振る舞うことがわかった.これは,通常の熱平衡状態への緩和に比べて非常に早いタイムスケールである. また,SU(2)ゲージ理論のスクランブルの様子を定式化するためにHayden-Preskill思考実験に基づく量子テレポーテーションプロトコルを適用した.この手法は,ノイズから生じるデコヒーレンスの存在下で情報スクランブルを診断する際,非時間順序相関関数の直接測定よりも優位な性質を示す.我々は,Isingスピン鎖とSU(2)格子Yang-Mills理論という2つの物理系にこのプロトコルを適用することでその有用性を示した.その結果,Yang-Millsモデルが情報スクランブルの兆候を示すことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小さい系でのゲージ理論の実時間発展の問題に対して一定の結果を得ることができた.また.有限密度の系の問題に適用する準備も進んでいる.今回はSU(2)について研究を行なったが,SU(3)への拡張の目処も立っている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は, 有限密度系への適用を試みる.まず低次元系である(1+1)次元QCDの問題を考える.(1+1)次元系では,フェルミオンをスピン系にマップすることが可能であり,また,密度行列繰り込み群の手法も発達しているためその手法を用いた解析を行なう.また,高次元系への拡張も行なっていく.
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