2023 Fiscal Year Annual Research Report
A new type of chemical reaction within icy grains
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21H01139
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
柘植 雅士 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60454211)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 表面拡散 / 化学進化 / 氷星間塵 / 星間分子雲 |
Outline of Annual Research Achievements |
星間分子雲は星の誕生する領域であり、そこで起きる化学進化過程(原子や単純な分子から複雑な分子が生成する過程)はその後に誕生する惑星系の始原物質条件を決める重要な過程である。星間分子雲中の10 K程度の極低温条件下では、主に水分子からなる氷で覆われた直径100 nm程度のサイズの氷星間塵が存在し、その表面上での化学反応が分子進化の鍵となるとして、多くの理論的・実験的研究がなされてきた。特に、水素原子は星間分子雲の10 Kという極低温下でも氷表面上を自由に拡散するため、水素原子のかかわる表面反応の重要性が認識されてきた。その一方で、氷表面での滞在時間が減少することから、20 Kを超える温度領域では水素原子が関わる表面反応は不活性となると考えられてきた。2022年度までに研究代表者らは、~100 K程度の中温域においても、星間塵表面に降着する水素原子は氷内部に侵入・拡散し、氷内部に存在する原子・分子種と反応しうることを見いだした。 2023年度には、これまで水素原子について得られた知見を炭素原子に拡張することを試みた。研究開始時点では、炭素原子は氷表面に強く吸着(化学吸着)して低温条件下で表面を拡散することは無い、と考えられていた。研究代表者らが開発を続けてきた氷表面ラジカルの検出法(PSD-REMPI法)を炭素原子に適用することで、一部の炭素原子は弱く吸着(物理吸着)しており、拡散しうることが見出された。さらに、氷表面拡散の活性化エネルギーを決定した。この結果から、星間分子雲条件下では22 K程度で炭素原子拡散が誘起されることがわかった。すなわち、炭素原子は氷表面上の欠陥から氷内部に侵入しうるほか、他の分子種との反応を通じて分子骨格の成長を伴う化学進化が進行することが示唆された。本研究成果をNature Astronomy誌に原著論文として報告した。
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Research Progress Status |
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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