2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21H01140
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 雅彦 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (50723277)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 直 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 主任研究開発員 (10399553)
高橋 太 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20467012)
黒澤 耕介 千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 上席研究員 (80616433)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 衝突残留磁化 / 惑星磁場 / 磁気測定 / 衝突実験 / 惑星探査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,実験により衝突残留磁化強度分布モデルを構築し,そのモデルを使って,地球型惑星の衝突盆地上空で人工衛星により観測された惑星磁場強度記録を読み解き,地球型惑星の磁場強度進化を復元する.そのために研究期間内に,(1)衝突残留磁化着磁実験,(2)衝突実験試料の残留磁化分布測定,(3)衝突磁化強度分布モデルの作成,(4)衝突盆地上空での人工衛星による磁場観測データ取得・解析,を実施する.そして項目3と4の成果を合わせて,(5)衝突イベント時の古惑星磁場強度を復元する,という研究計画である.2021年度までの研究において,以下の成果が得られている.細粒なチタン磁鉄鉱を含む玄武岩試料を用いて衝突磁化着磁実験および回収試料の細分化・残留磁化測定を行い,衝突残留磁化の残留磁化強度および残留磁化安定性が衝突点からの距離に応じて系統的な変化をする事が確認された(上記項目1と2に対応).衝突計算コードを用いて衝突実験時に玄武岩試料が経験した温度・圧力変化を計算して磁気測定の結果と比較する事で,衝突残留磁化と温度・圧力変化の対応関係を得ることに成功した(Sato et al. 2021, GRLで成果報告).予察的な解析から,衝突残留磁化強度を衝撃波伝搬時の温度・圧力変化の関数として表現できる可能が示された(項目3に対応).人工衛星による磁場観測データとして,月(かぐや,LP),火星(MGS,MAVEN),水星(MESSENGER)の磁場観測データを解析用に取得し,クレーター周辺での衝突残留磁化の痕跡を検討するための解析環境の整備を行った(項目4に対応).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では事業期間中において,(1)衝突残留磁化着磁実験,(2)衝突実験試料の残留磁化分布測定,(3)衝突磁化強度分布モデルの作成,(4)衝突盆地上空での人工衛星による磁場観測データ取得・解析,(5)衝突イベント時の古惑星磁場強度を復元,の実施を計画している.2021年度までの研究において,細粒なチタン磁鉄鉱を含む玄武岩試料を用いて項目1と2を実施し,予察的な解析から項目3が実現可能なデータセットが得られている事が確認された.項目1と2の手法確立および項目3の実施目処が立ったため,残りの事業期間中において,細粒磁鉄鉱と鉄ニッケル合金について項目1~3の実施および項目4を実施し,それらに基づいて項目5の実施が十分に可能な進捗状況にあると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,衝突残留磁化を用いた新手法により,地球型惑星の形成初期における磁場強度の変遷を明らかにする.そのために,(1)衝突残留磁化着磁実験,(2)衝突実験試料の残留磁化分布測定,(3)衝突磁化強度分布モデルの作成,(4)衝突盆地上空での人工衛星による磁場観測データ取得・解析,(5)衝突イベント時の古惑星磁場強度を復元,を実施する.これまでの進捗に基づき2022年度以降は以下を実施する予定である.(A)細粒チタン磁鉄鉱を含む玄武岩試料を用いて追加実験を行い,得られた実験データの詳細な解析を行う事で,項目3の衝突磁化強度分布モデル作成を行う.また項目4として,作成した分布モデルを用いて衝突盆地上空での磁場分布をフォワード計算し,人工衛星の観測から得られている惑星磁場のデータと比較し衝突残留磁化の痕跡について検討を行う.(B)細粒チタン磁鉄鉱に対して確立した項目1から4に対応する一連の研究手法を,細粒磁鉄鉱を含む岩石試料に対して適用する事で,衝突磁化強度分布モデルの作成および衝突残留磁化の痕跡について検討を行う.(C)細粒チタン磁鉄鉱に対して確立した上記項目1から4に対応する一連の研究手法を応用・発展させる事で,鉄ニッケル合金の衝突磁化強度分布モデルの作成および衝突残留磁化の痕跡について検討を行う.(D)地球型惑星の地殻中に含まれる強磁性鉱物の有力候補である,チタン磁鉄鉱・磁鉄鉱・鉄ニッケル合金における項目1から4の結果を比較・検討する事で,惑星表層のクレーター形成時の古惑星磁場強度を復元し,地球型惑星の形成初期における磁場強度の変遷を明らかにする.
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