2022 Fiscal Year Annual Research Report
高層大気の広がりから太陽系外地球型惑星の表層環境を探るための理論的研究
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21H01141
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
生駒 大洋 国立天文台, 科学研究部, 教授 (80397025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 陽史 立教大学, 理学部, 特任准教授 (50963815)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 惑星大気 / 系外惑星 / 地球型惑星 / 高層大気 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、研究代表者らがこれまで構築してきた惑星形成理論モデルから予測される多様な地球型惑星(多様な大気量および成分、多様な海水量など)に対して、それらが低温星 (M型星やK型星)のハビタブルゾーンのような強紫外線環境下にある場合に、高層大気(熱圏および外圏)を占める中性酸素および中性水素がどのように広がるのか定量化し、紫外線トランジット観測で検出可能かどうかを検討した。
低温星のハビタブルゾーンは強紫外線環境であることが知られており、大気の大規模な散逸も想定しなければいけない。また、低温星は前主系列段階が長く、(太陽型星とは対照的に)光度が年齢と共に下がる。そのため、現時点で海を持つ惑星も、過去には海が蒸発するくらい高温であった可能性がある 。そこで、昨年度から手掛けている熱圏モデルの開発と並行して、大気散逸および外圏モデルの開発も行った。外圏底までの流体力学的散逸大気モデルについては、岩石蒸気大気の散逸の検討の際に開発した流体力学的なフレームワークに、その数値計算プログラムの光化学反応ネットワークおよび放射冷却過程を改良して用いた。
先行モデルは現在の太陽系内惑星(地球や火星)を想定し、観測結果との整合性を確認しつつ構築されたものである。しかし、低温星のハビタブルゾーンのような強紫外線環境で重要となってくる冷却効果(分子の振動遷移や原子の電子遷移など)が考慮されていない。それらを考慮した結果、先行モデルの予測に比べて我々のモデルでは、大気の散逸が大幅に抑制されることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インパクトの高い学術論文を複数出版することができた。また、モデルの開発も着実に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究結果は、低温星まわりのハビタブルゾーンのように強力な紫外線環境であっても地球型惑星の大気は安定的に保持されうるという意味で、ハビタブル惑星の高い存在確率を予測するものであり、将来のハビタブル惑星探査に対してポジティブな示唆を与えるものである。しかし一方、大気の広がりを観測してハビタブル惑星の表層環境を予測するという点では、従来モデルの予測に比べて低い観測可能性を示唆するものであり、より詳細なモデル化によって観測可能性を追究する必要性がある。また、3次元的な広がりおよびそれを利用した観測的検出可能性についても引き続き検討を進める必要がある。
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