2021 Fiscal Year Annual Research Report
清浄鉱物表面への水素原子の化学吸着と水素分子生成:低密度雲から分子雲への進化の鍵
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21H01143
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
羽馬 哲也 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20579172)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 星間塵 / ケイ酸塩鉱物 / 水素原子 / 水素分子 / 化学吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素分子(H2)は星間空間で最も存在度が高く,恒星の形成に不可欠な重要な分子である.H2は鉱物でできた塵(星間塵)の表面に水素原子(H)が吸着し再結合することで生成している(H + H → H2).しかし,20 K以上の星間塵表面にはH原子は物理吸着(ファンデルワールス力による吸着)できないため,20 K以上の低密度雲(>20 K)からどのようにしてH2が生成し,20 K以下の分子雲(<20 K)へと進化しているのかについては明らかになっていない. そこで本研究では,鉱物表面におけるHならびにH2の化学吸着(化学結合による強い吸着)の可能性を探る実験装置の開発を行う.化学吸着を正確に調べるためには,鉱物試料を1000 Kまで加熱することで清浄化する必要がある.さらに,そのまま大気にさらすことなく20 K(H原子が物理吸着できる限界の温度)ほどまで冷却する必要がある.しかし,鉱物は絶縁体であるためそのままでは抵抗加熱ができず,さらに脆いため冷凍機と熱接触良く接着することが困難である.これらの技術的困難を克服するために,本研究では鉱物試料とタングステン円板とを耐熱性セラミック接着剤で熱接触良く接着し,このタングステン円板にタンタルワイヤーをスポット溶接することで,タンタルワイヤーによる鉱物試料(タングステン円板を含む)の抵抗加熱を可能にする装置を設計した.また,装置の設計と並行して,真空チャンバーの設計ならびに冷凍機などの購入も進めており,装置の組み上げに向けて準備を整えることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
装置の設計や開発などは今のところ滞りなく進んでいるため.新型コロナウイルス感染症の影響で一部の備品や消耗品類の納入が遅くなっているが,今のところ研究の進捗に大きな問題は生じていない.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は設計した装置の組み上げならびに性能評価を行う予定である.実験についてはまずは取り扱いが容易な水素分子と重水素分子について行う予定である.水素原子あるいは重水素原子について実験を行う場合は,水素分子(重水素分子)を何らかの方法で分解する必要があるが,実験に必要な水素原子の流束を本年度中に見極め,市販の水素原子源を購入するか,あるいは自作するかについて判断を行う.
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