2022 Fiscal Year Annual Research Report
断層の高速摩擦すべりに伴うトライボケミカル型水素発生プロセスの解明
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21H01185
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
亀田 純 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (40568713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 徳行 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (00144692)
廣瀬 丈洋 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 研究所長 (40470124)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トライボケミストリー / 水素 / メタン / 断層 / 蛇紋岩化作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、主に沈み込み帯巨大分岐断層とオマーンの地殻マントル境界断層を対象として岩石の残留ガス分析を行い、水素・メタンの生成・濃集機構について検討した。今年度は、こうした事例をさらに増やすため、分析対象をさらに拡大して残留ガス分析を行った。 (1)沈み込み帯プレート境界域を構成する塩基性岩試料の残留ガス分析:プレート境界域において異なる地温を経験したと考えられる付加体および変成岩体中の塩基性岩を対象として(温度条件は150℃~550℃)、ガスクロマトグラフィーによる岩石残留ガス濃度組成分析を実施した。分析の結果いずれの試料からも水素、メタン、エタン、二酸化炭素が検出された。水素およびメタンはそれぞれ約330℃と200℃の古地温を経験した試料でピークの濃度が確認された。試料の鉱物組成との対比から、水素生成にはエピドートの形成が関与していると推定される。メタン濃度の高い試料は、他の試料に比べて水素/メタン比や二酸化炭素/メタン比が著しく低下しており、サバチエ反応によるメタン生成が促進した可能性がある。 (2)北海道神居古潭帯、沙流川岩体に露出するかんらん岩の残留ガス分析:超塩基性岩の蛇紋岩化作用に伴うガス生成機構を詳細に検討するため、本岩体を対象に、現地調査、薄片観察、残留ガス分析を開始した。現地調査では、新鮮なかんらん岩から程度の異なる蛇紋岩化作用(40~100%)を受けた岩石まで連続的に観察することができた。また鏡下では3つの異なるタイプの蛇紋岩化作用や、炭酸塩脈の発達などが確認された。現段階では、蛇紋岩化作用とガス組成に明瞭な関係は確認されておらず、次年度も継続して検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は新たに塩基性岩や国内のかんらん岩体において水素・メタン生成の痕跡を見つけることができ、大きな進展があった。特に神居古潭帯のかんらん岩体はアクセスが容易なことに加えて露頭状況が良好であり、本課題を遂行する上で最適な調査地と考えており、今後の研究の大きな展開が期待できる。一方、質量分析計の立ち上げに時間を要しており、ガスの起源を検討することができておらず、この点は当初計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究により沈み込みプレート境界域の塩基性岩中における水素・メタン生成の痕跡を見つけることができた。特に200~300℃の温度条件で鉱物反応やサバチエ反応によるガス生成が進んでいる可能性があり、このような条件での熱力学的な解析を試みる。また、これまでに検討してきた残留ガスの起源を特定するため、質量分析計を用いて同位体比分析に取り組む。さらに今年度より、蛇紋岩化作用に伴うガス生成過程の詳細を検討するため、フィールド調査や岩石学的な分析を開始しており、ガス分析と並行してこれらをさらに進める。
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Research Products
(3 results)