2022 Fiscal Year Annual Research Report
単細胞生物の複雑性:有孔虫サブシングルセル遺伝子発現と超微細構造解析で迫る
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21H01202
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
野牧 秀隆 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(超先鋭研究開発プログラム), 上席研究員 (90435834)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HUSNIK Filip 沖縄科学技術大学院大学, 進化・細胞・共生の生物学ユニット, 准教授 (30886130)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 真核単細胞生物 / 細胞内機能分化 / 細胞小器官 / 遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
相模湾深海底水深700-1500mの範囲で採取、固定したRNA解析用有孔虫4種、およびX線CT、透過型電子顕微鏡(TEM)観察用有孔虫11種の深海性有孔虫個体を用いた解析を行った。RNAseq解析については、相模湾を含めた複数の深海域で追加の試料採取、固定を行い、解析に用いた。X線CT観察とTEM観察をもとに初室―最終房室までの細胞小器官の分布を解明した結果、有孔虫の種類により、その細胞小器官の分布に違いがあることを明らかにした。特に、最終房室側2-3房室で環境とのやり取りをしていることが示唆され、バクテリアを共生させる種類についてはこれらの房室への局在が観察された。さらに、細胞小器官の分布の違いから推測される房室ごとの機能の違いを、微量遺伝子発現解析および付随する遺伝子発現情報解析により明らかにするための、手法確認をおこなった。まずは大型の有孔虫であるXenophyophoreを用いた遺伝子発現解析を行い、有孔虫においてもその手法が有効であることを確認した。 その後、鹿児島県にある部分循環湖において藻類とバクテリアを二重共生させる有孔虫のサンプリングを行い、その細胞内微細構造観察、シングルセルゲノム解析を行った。環境変化の影響か得られた個体は少なかったものの、TEM観察の結果からは、相模湾の有孔虫の例とは異なり、バクテリアを共生させている房室は広範にわたることから、共生の程度がより進んでいることとの関連性が示唆された。シングルセルゲノム解析の結果から、二重共生させているplastidの系統などについても明らかにし、相模湾深海底の特定の有孔虫で見られる葉緑体様構造の獲得機構などとの関連性を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X線CT観察やTEM観察による細胞小器官の分布パターンの観察では、有孔虫の種類ごと、および細胞内の位置ごとに特徴的な細胞小器官の配置が確認できており、細胞内機能分化の様子を裏付けるものである。これらが有孔虫の生息環境や内在生物との共役関係によっても異なる傾向が見られ、微生物共生を含めた細胞内機能分化と、多様な環境への適応について多面的な知見が得られつつある。さらに、細胞部位ごとの遺伝子発現解析を行うための手法開発、改良も、研究分担者、研究協力者とともに順調に進めており、研究計画はおおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、X線CT観察やTEM観察により、有孔虫細胞内での細胞小器官分布パターンについて明らかにするとともに、環境を変えた飼育実験個体でも行うことで、硝酸塩呼吸など特定の代謝と細胞小器官分布パターンとの関連性を明らかにする。これらの代謝と細胞小器官の関連を直接的に検討するため、凍結固定試料のSEM-EDS分析を行って房室、細胞小器官ごとの元素マッピングを行う。さらに、追加で行う航海において深海性有孔虫を採取し、船上で採取直後に有孔虫細胞を脱灰、解剖し、サブシングルセルレベルでの解析も行う。遺伝子発現プロファイルを正確に把握するため、船上での解剖、固定に加え、船上ではRNAlaterで固定し、下船後に解剖するという手法も用いる。得られた遺伝子発現プロファイルを種ごと、環境ごとに比較解析することにより、それぞれの有孔虫が房室ごとに行っている代謝と環境適応との関連性を明らかにする。
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