2022 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative Evaluation of residual life of heat-resistant alloy under random creep-fatigue loadings at elevated temperature
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21H01205
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三浦 英生 東北大学, 工学研究科, 教授 (90361112)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高温強度 / クリープ疲労損傷 / 原子配列の秩序性 / 電子線後方散乱回折 / 粒界割れ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では各種高効率エネルギープラントで応用される最先端耐熱合金の高温クリープ疲労損傷の支配因子の定量的な解明を目的としている.この劣化損傷の進行過程を,構造材料の高温高負荷環境における劣化損傷が材料を構成する構成原子の応力依存の異方的増速原子拡散現象(D = D0exp{-(Q-σV)/kT})に基づき発生することを明らかにした.ここでDは拡散定数,D0は定数,Qは熱力学的に定義される平衡状態での活性化エネルギー,σは作用する応力,Vは等価体積,kはボルツマン定数,Tは絶対温度である.特に本年度においては応力依存項を高精度化し,劣化損傷の活性化エネルギーを Q’ = Q - (SF)σnom V [ 1 - exp{-α(εnom +εint -εcr)}] で表現することで粒界品質に依存した劣化の活性化エネルギーの多様性を定量的に把握できることを実証した.ここでSFは粒界を構成する結晶粒のSchmid因子の最大値,αは定数,σnomは公称応力,εnomは公称ひずみ,εintは格子不整合,εcrは弾性限界ひずみである.この局所的ひずみエネルギーに依存して粒界近傍の活性化エネルギーが減少し,原子空孔や転位の発生,集積が加速することで粒界品質が劣化し,結果として粒界強度が減少することで粒界割れが急激に加速し破断寿命の著しい現象を引き起こすことを定量的に解明した.また,この粒界強度の劣化現象を分子動力学解析によって確認実証した.粒界近傍に発生する局所ひずみ集中場は,格子不整合に加えて,隣接する結晶粒間の結晶方位差に基づく弾性率差によって公称応力下で発生するひずみ差が重畳することで上記劣化損傷がさらに加速することが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画通り,高音での劣化損傷機構を,温度と時間,機械的負荷(応力とひずみ)の重畳現象として定量的に表現することに成功した.特に原子空孔や転位などの原子スケールでの欠陥の発生集積で支配される劣化損傷をひずみ誘起増速拡散現象を説明する修正アレニウスの式で定量的に表現することに成功した.ひずみエネルギーを公称応力と局所ひずみ(公称ひずみ,格子不整合,弾性限界ひずみ,弾性率の異方性起因ひずみ等の和)の積で表現することで,実験で実証された局所的に異なる劣化損傷の活性化エネルギーを定量的に説明できることを世界で初めて実証した.本研究成果に対しては米国機械学会(ASME)からOutstanding Student Paper Award, International Symposium on Structural IntegrityからBest Student Award, Outstanding Student Paper Award,日本機械学会から独創研究学生賞3件を受賞するなど,研究の独創性や工学的有用性は国内外の学会からも高く評価されている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では各種高効率エネルギープラントで応用される最先端耐熱合金の高温クリープ疲労損傷の支配因子の定量的な解明を目的とする.クリープ疲労損傷ではほぼ全ての粒界で割れが発生しており,著しい劣化の加速が生じている.この劣化は,粒界への炭化物や酸化物の偏析により加速されることも明らかになっている.この劣化損傷の進行過程は,構造材料の高温高負荷環境における劣化損傷が材料を構成する構成原子の式(1)に示す応力依存の異方的増速原子拡散現象に基づき発生することを明らかにした. D = D0exp{-(Q-σV)/kT} … (1) ここでDは拡散定数,D0は定数,Qは熱力学的に定義される平衡状態での活性化エネルギー,σは作用する応力,Vは等価体積,kはボルツマン定数,Tは絶対温度である.応力は引張応力が正の値,圧縮応力が負の値を示す.本式が適用される化学反応(核の発生や拡散)現象は引張応力の作用で加速され,圧縮応力の作用で抑制されることになる.本式を転位や原子空孔の発生や拡散,各種析出物の発生等に適用し,温度と機械的な応力の連成現象として材料組織の劣化機構を解明する.さらに,結晶粒界近傍や母相と析出物間の格子不整合に起因した局所歪み場の存在も局所応力場評価に取り込み,外力と内部歪み場による内力を統合した機械的応力場の解析も加え,クリープ疲労損傷を機械的な損傷に留まらず,化学的な組織変化に起因した応力歪み場との連成損傷と位置づけ,式(1)の応力を時間の関数とし,時間積分することで使用条件に依存した劣化進行の定量的な評価を可能にする.さらに分子動力学解析手法を応用し,電子線後方散乱解析から得られるIQ値の物理化学的意味づけの解明も推進する.転位や空孔分布に依存した原子配列の秩序性の劣化と粒界強度の低下の相関関係を定量的に解明することでIQ値の定量的な物理化学的意味付けも明らかにする.
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Research Products
(17 results)