2021 Fiscal Year Annual Research Report
Ultrashort pulse laser / diamond processing capability enhancement and process link optimization on sapphire capillary
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21H01231
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
片平 和俊 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (70332252)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 超短パルスレーザ / 微細ダイヤモンド工具 / 単結晶サファイア / 大気圧プラズマ / ミーリング加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
超短パルス(フェムト秒)レーザ,ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD),微細多結晶ダイヤモンド(PCD)工具等,それぞれの加工性能を強化/最大化させるとともに,それらのプロセスリンクを至適化することで,高精度長尺サファイア毛細管創製を実現することを目的としている.とくにパルスレーザ加工機によるナノ多結晶ダイヤモンド工具の高品位迅速成形を試行した.実験には主にナノ秒パルスレーザ,フェムト秒パルスレーザを用い,パルス幅,波長,偏波方向などの加工条件を変更しながら得られる加工面の性状評価を行った.その結果,ナノ秒パルスレーザにおいては,どの加工条件においても加工面のグラファイト化を避けることが困難であり,また面粗さや体積除去率もフェムト秒パルスレーザと比較して劣ることから,ナノ秒パルスレーザをポストプロセス無しでの工具成形に用いることは困難であるとの結論を得た.フェムト秒パルスレーザによるNPDの加工条件をレーザの偏波方向および波長に着目して調査した結果,円偏波での加工面は,直線偏波のそれとは異なり,様々な偏波方向で加工が行われるため,ナノ周期構造の方向もランダムになり,凹凸が低減された.最終的に,波長532 nm,円偏波のレーザ加工により,面粗さは20 nmRaを示し,仕上げ加工の目標値である0.05 nmRa以下を達成した.一方,微細PCD工具による単結晶サファイアの基礎加工特性評価に関する実験も系統的に行った.研磨の有無により工具刃部の表面性状が異なるPCDラジアス工具を用い,単結晶サファイアの微細溝加工特性を評価した.その結果,研磨済工具より未研磨工具を用いた方が高品位な加工面(8.9 nm Sa)が達成可能であることが確認できた.すなわち,単結晶サファイアに対して微細溝加工を行うには表面を研磨しておらず砥粒の突き出しを確保している未研磨工具が有効であるとの結論が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,研究実績の概要に整理した通り,フェムト秒レーザによるナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)工具の迅速成形および微細多結晶ダイヤモンド(PCD)工具による単結晶サファイアの基礎加工特性評価について,系統的な実験を行った.本年度の研究が当初の予定以上に進捗した要因として,①高性能エアタービンスピンドル(主軸回転数60000 rpm,振れ精度1ミクロン以下)を超精密5軸加工機へインストール,②工具回転時バランスモニタリングのための多軸測定フィールドバランサの導入,③フェムト秒レーザ用2軸ガルバノスキャナおよび専用制御ソフト(CAD/CAM)の導入,④表面改質層分析のための表面電位測定器のバージョンアップ,などを順調に実施できたことが挙げられる.さらに,フェムト秒レーザの応用展開として,大気圧低温プラズマを援用したレーザ表面改質処理の実現可能性について探るため,新たに専用装置を製作している.すなわち,被処理材表面の局所領域を大気圧プラズマで覆いつつ,フェムト秒レーザを照射することで,光エネルギによるアブレーション加工性能の最大化を狙うと同時に,プラズマの化学反応促進により被加工物極表面に反応層(表面硬化層、マイクロテクスチャ構造)を創製するシステム開発を試みている.本装置を用いて表面改質を施したチタン合金に対し,透過型電子顕微鏡を用いて改質層断面を結晶格子レベルまで観察したところ,プラズマを援用することによりレーザ改質面に形成される微細周期構造内部がナノ結晶化するという新規の知見を得ている.結晶粒微細化により硬さをはじめとする様々な表面機能を創発する可能性がある.今後も,開発したシステム/手法の実用化へ向けた課題抽出と,得られる表面改質層の形成メカニズムを解明するとともに,“プラズマ状態の中にレーザの光エネルギを導入する”ことで新たな機能を創発するという学術的探究を実施する.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,いくつかの最先端加工技術(フェムト秒レーザ成形,微細ダイヤモンドミーリング,超精密研削)それぞれのパフォーマンスを強化/最大化させるとともに,それらのプロセスリンクを至適化することで,長尺高精度サファイア毛細管の開発に資する研究を実施するとともに,得られた成果をさらに掘り下げることで新規アプリケーション拡充を狙う.今後の研究実施計画は次のとおりである.①[表面テクスチャ制御PCD工具によるサファイア高品位鏡面仕上げ]微細PCD工具を用いて,サファイアに対して高精度に効率良く,かつ鏡面加工(Ra 5 nm以下)を達成するためには,工具最表面のダイヤ粒突出をいかに均一に,最適に制御するかがカギである.PCD工具表面に対し,放電成形後にツル―イングを行い平坦化させた工具,放電成形のみでダイヤ砥粒の突き出しを確保した工具という2種類の工具を用い,両者の加工特性の違いを詳しく調べることで多結晶ダイヤ砥粒の突き出しの有無が加工面仕上げに及ぼす影響について検証する.②[NPD工具によるサファイア毛細管の高効率・高品位加工とプロセス構築]NPD工具を用いてサファイアをミーリング加工する際に,加工のフロント(工具と被加工物のナノ領域接触点)における,工具切れ刃の作用メカニズム,とくに工具摩耗の発生-進展挙動を詳細に解析する.さらに,NPD工具の摩耗抑制条件を見極めることで,工具の成形条件最適化へとつなげる.③[フェムト秒レーザと大気圧プラズマアシスト技術のインテグレーション]これまで得られた成果の新たな展開として,フェムト秒レーザ成形技術と大気圧プラズマアシスト技術をインテグレーションさせるため,専用システムのデザイン/機能評価プロトコル開発を進め,開発したシステム/手法の実用化へ向けた課題抽出と,得られる表面改質層の形成メカニズムを解明する.
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