2022 Fiscal Year Annual Research Report
Ultrashort pulse laser / diamond processing capability enhancement and process link optimization on sapphire capillary
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21H01231
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
片平 和俊 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (70332252)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 多結晶ダイヤモンド / 微細工具 / フェムト秒レーザ / 高品位加工 / サファイア |
Outline of Annual Research Achievements |
超短パルス(フェムト秒)レーザ,ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD),微細多結晶ダイヤモンド(PCD)工具等,それぞれの加工性能を強化/最大化させるとともに,それらのプロセスリンクを至適化することで,高精度長尺サファイア毛細管等の高付加価値微細キーパーツ創製を実現することを目的としている.本年度は,工具表面の研磨の有無によりダイヤモンド砥粒の突き出し高さが異なる2種類のPCD工具(PCD工具およびPolished PCD工具)を用い,両者によるサファイアの加工特性の差異を検証した.さらに,2種類の工具のうち,サファイア加工に適する一方を見極めたうえで,切込み量および送り速度を変えた際の加工特性を評価した.その結果,PCD工具を用いて加工した表面の算術平均粗さは13.9 nmSaであり,延性モードによる高品位加工が達成できることを確認した.一方,Polished PCD工具を用いた場合は,脆性破壊による加工が主体的となり,加工後表面の算術平均粗さは242.4 nmSaであった.すなわち,サファイアに対して微細溝加工を行うには,PCD工具表面を研磨せず砥粒の突き出しを確保することで,いわゆる“研削効果”を積極的に発現させることが有効である.また,PCD工具を用いて,切込み量0.2 μm,送り速度2 mm/minで加工した結果,算術平均粗さ3.2 nmRa という高品位加工面が得られた.送り速度を上げていくと,10 mm/minより材料除去機構が延性モードから脆性モードに遷移し,加工面の損傷も顕著となった.さらに,飽和水蒸気を用いたマイクロドロップピーニングによる工具リコンディショニングについて提案した.同手法を用いることにより,工具表面の付着物は確実に除去された.また,同処理を施す前に比べ処理した後の方が高品位な加工面が得られ,付着物を除去する有効性を確認し得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,研究実績の概要に整理した通り,工具表面の研磨の有無によりダイヤモンド砥粒の突き出し高さが異なる2種類のPCD工具(PCD工具およびPolished PCD工具)を用い,両者による単結晶サファイアの加工特性の差異を検証した.さらに,2種類の工具のうち,サファイア加工に適する一方を見極めたうえで,切込み量および送り速度を変えた際の加工特性を評価した.本テーマを含む一連のダイヤモンドミーリングの成果を国内学会誌や国際会議にて報告している.本年度の研究が当初の予定以上に進捗した要因として,昨年度に超精密5軸加工機へインストールした高性能エアタービンスピンドル(主軸回転数60000 rpm,振れ精度1 μm以下),および工具回転時バランスモニタリングのための多軸測定フィールドバランサを研究補助員がハンズオンで使いこなすことができたことが大きい.さらに,フェムト秒レーザの応用展開として,フェムト秒レーザ成形技術と大気圧プラズマアシスト技術をインテグレーションさせるため,専用システムのデザイン/機能評価プロトコル開発を実施した.このテーマでは,“プラズマ状態の中に超短パルスレーザの光エネルギを導入する”ことで新たな機能を創発するという学術的探究を大目標としている.すなわち,ターゲット材表面の局所領域を大気圧プラズマで覆いつつ,フェムト秒レーザを照射することで,光エネルギによる表面プラズモン励起の最大化を狙うと同時に,プラズマの化学反応促進により被加工物極表面に高機能層を創成するプロセス開発を試みた.次年度に向けて,開発したシステム/手法の実用化へ向けた課題抽出を継続するとともに,得られる表面改質層の形成メカニズム解明を試みている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究実施計画は以下に示す二つのテーマを推進する.①[NPD工具によるサファイア毛細管の高効率・高品位加工とプロセス構築]NPD工具を用いてサファイアをミーリング加工する際に,加工のフロント(工具と被加工物のナノ領域接触点)における,工具切れ刃の作用メカニズム,とくに工具摩耗の発生-進展挙動を詳細に解析する.さらに,NPD工具の摩耗抑制条件を見極めることで,工具の成形条件最適化へとつなげる.また,超短パルス(フェムト秒,ピコ秒)レーザを照射することで,工具表面(とくにチャンファー部)にナノ周期微細構造を創製し,切削負荷低減及び切りくず除去性能向上も試みる.研究最終年度であるので,蓄積した一連のダイヤモンド加工システム,加工アシストシステム(レーザ工具成形システム,プラズマ援用クーラント)を用いて,サファイア毛細管を始めとする最先端のアプリケーション創発を狙う.②[フェムト秒レーザと大気圧プラズマアシスト技術のインテグレーション]これまで培った知見の新たな展開として,“大気圧プラズマ援用による表面改質機能創発メカニズムの解明”,さらに開発した手法のアプリケーション展開を狙い“金属系生体材料Co-Cr合金の高機能CrN膜の創成”という二つのサブテーマに取り組む.本研究の成果物として具体的には金属系生体材料を素材とするインプラントや人工関節等が想定されるが,更なる小型化・高機能化が要求される人工臓器や神経センサの開発において,それらの表面機能向上を狙った展開も期待できる.超短パルスレーザを用いた除去加工による形状創製後の仕上げ表面改質としても使用できるなど,幅広いアプリケーションへと適用でき,波及効果は甚大であると考えている.
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