2022 Fiscal Year Annual Research Report
Precise Molecular Design of Organic Friction Modifiers by Large-Scale Molecular Simulations, Advanced Measurements, and Chemical Syntheses
Project/Area Number |
21H01238
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
張 賀東 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (80345925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 耕二 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (70293686)
塚本 眞幸 名古屋大学, 情報学研究科, 講師 (10362295)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トライボロジー / 境界潤滑 / 分子シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
地球温暖化防止のため,摩擦・摩耗によるエネルギー損失や温室効果ガスを極限まで削減できるグリーン潤滑が要請されており,潤滑油の添加剤として高性能な環境に優しい有機摩擦調整剤(OFM)が必須である.本研究では,大規模マルチスケール分子シミュレーション法,およびシミュレーション結果を検証可能な先端計測法を確立し,さらに新規OFM分子を設計・合成し,三者の協働により,体系的なOFM分子設計指針の構築を図る.前年度に引き続き,これまでに開発した新規なTEMPO系OFMを主要な対象として,その作用メカニズムの解明のために,シミュレーションと実験の両面から研究を進めた. ・ミュレーションでは,全原子モデルの分子動力学(MD)計算および粗視化モデルの構築を実施した.全原子MD計算により,TEMPO系分子の官能基とアルキル鎖の長さが,固体表面に形成した吸着膜の構造とせん断強度に及ぼす影響を明らかにし,OFMの分子設計に関する重要な知見が得られた.粗視化モデルの構築については,広範の熱力学条件において液体の構造と圧力の両方を高精度に再現できる粗視化方法を提案するとともに,OFM含有潤滑現象の解明に向けて,OFMを溶かす基油であるドデカンの粗視化モデルを構築した. ・実験では,原子間力顕微鏡を用い,マクロな実用性能評価実験のような固体面の摩耗がない条件において,油中OFMの摩擦特性を測定するとともに,Eyring活性化エネルギーモデルを用いて解析した.Eyringモデルから求めた活性化エネルギーから,吸着膜の負荷能力やせん断運動がどの分子間に発生しているかなど,固体摺動面間のOFM分子挙動に関する知見が得られ,シミュレーション結果の検証・補完につながった.また,これまでのシミュレーションと実験の結果を踏まえて,新規OFM分子の設計・合成に着手した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に述べたように,シミュレーションと実験の両方で成果を着実にあげてきた.とくに,これまでに開発した新規なTEMPO系OFMの作用メカニズムをシミュレーションと実験の両方で解明しつつあり,今後一層高性能なOFMの開発に資することができた.そのため,おおむね順調に進展していると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
シミュレーションでは,OFMの粗視化モデルを構築するとともに,表面粗さがOFMの吸着挙動に及ぼす影響を解明する.また,ポリマー系OFMを対象とした全原子MD計算を行い,分子構造の探索範囲の拡大により,高性能OFMの分子設計指針を提示する.シミュレーション結果を基に,新しいOFM分子を設計・合成し,マクロな摩擦・摩耗特性を評価し,一層の高性能化を目指す.
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