2021 Fiscal Year Annual Research Report
Understanding and control of electron and phonon transport in hierarchical structure of carbon nanotubes
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21H01259
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
児玉 高志 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (10548522)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志賀 拓麿 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10730088)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / ナノスケール伝熱 / ナノ/マイクロ加工 / 高熱伝導材料 / 熱電変換材料 / 分子内包効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、カーボンナノチューブ(Carbon nanotube, CNT)の分子内包効果やバンドル化による伝導性の変化などCNTの”複合ナノ構造化”によるナノレベルにおける物性変化とCNTがバルク構造化した際の熱物性の伝搬メカニズムに着目し、マイクロ加工デバイスを用いたナノスケール熱伝導測定技術、および我々研究グループが新たに開発したバルク四端子熱計測技術を利用した実証実験を主軸として物性解明を目標として研究を遂行している。 1年目は当初の計画通り、本助成で導入したエポキシダイボンダーを利用したバルク四端子熱測定用のデバイス製作技術を確立し、CNTの湿式紡糸線材や薄膜などのバルク構造体の熱伝導率、電気伝導率、熱起電力測定を行った。また、ナノスケール熱伝導測定に関しては、これまでと同様にマイクロデバイス定常法を用いて測定を行った。まず、バルクスケールの実験の結果、分散剤の種類や材料密度、配向性の違いなど高次構造因子の違いにより、常温で10~100 W/m/K程度の範囲で熱伝導率に違いが生じることがわかった。一方で線材や薄膜構造を構成する原材料CNTに対してナノスケール熱伝導評価を行った結果、試料直径が大きくなるにしたがって熱伝導率が著しく低下すること、直径が十分に太い場合には常温で約100 W/m/K程度とバルク体と同程度の熱伝導率に飽和することが明らかとなった。ナノスケール測定においては、チューブ間伝導が介在するような伝導距離ではないことから、これらの結果は、高次構造因子の他にバンドル化に伴うナノレベルでのCNT熱伝導率の低下がバルク熱物性に強い影響を及ぼしていることが示唆しており、バンドル構造における熱伝導率の向上がCNTの工学応用にとって重要であるという知見を見出した。また、一方で熱起電力に関しては原材料の性質によって支配されるという知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本助成金を利用して1年目に研究室に導入したエポキシダイボンダー装置と専用の真空下における電気計測装置群により、バルク四端子熱伝導測定デバイスの製作が研究室内で行うことが可能となり、実験効率が飛躍的に向上した。ナノスケールからマクロスケールまで幅広い材料形態の試料に対して低温から常温近辺まで電気的手法による熱伝導測定を効率よく行うための研究環境の構築が当初の計画どおり完了したと考えられる。また、これまでにも着手していたマイクロ加工デバイスを用いたナノスケール熱伝導に関しても測定デバイスへの試料導入、および熱伝導計測後に原子間力顕微鏡で試料サイズを直接観察する実験手法を確立することができ、研究効率が大きく向上したと考えられる。当初予定していた研究室内におけるCNT線材の紡糸や薄膜の製作技術を確立することができていない点においては遅れは生じたものの、おおむね順調に進んでいると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目に行った実験の結果、ナノレベルにおける熱伝導率の低下がCNTバルク構造体の熱伝導性に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。この結果を踏まえた上で2年目は、共同研究者より提供されている遷移金属ダイカルゴゲナイト内包CNTや直径分布の小さく制御されたCNTなどの希少CNT材料に対して、主にナノレベルにおける熱伝導測定を行い、熱伝導率の直径依存性を得ることでバンドル化による性能変化の違いについて実証する計画である。熱起電力などの熱電変換性能に関してもバルク物性に原材料の性質が強く反映されるという前年度の知見を踏まえた上で、ナノレベルでの変化についても同様に検証する。 また、バルク構造体に関しては、配向性に優れた紡糸線材に焦点を絞り、研究室内で合成可能な研究基盤の確立に着手する他、現在最も優れた材料配向性や高い材料密度に由来した高い電気伝導率を示すDexMat社製の線材にも着目し、それら線材のバルク四端子法による熱伝導率の評価や抽出した原材料の熱伝導率の直径依存性など、熱伝導性の階層評価を行う計画である。紡糸方法としては、強酸に溶解させる液晶紡糸技術が主流であることから、先行文献を参考にして設備の導入を進める計画である。CNTの紡糸に関しては大量の試料が必要であることから、OCSiAl社製や名城ナノカーボン社製の単層CNTや二層CNTなどの商用試料を用いて行う予定である。 そして、得られたデータを研究分担者である産業技術総合研究所の志賀拓麿主任研究員と共同で非平衡分子動力学計算、格子動力学計算、グリーン関数法などの分子シミュレーション技術と融合させることで解析を行い、CNT複合ナノ構造体における伝導メカニズムの解明を継続して行う計画である。
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Research Products
(10 results)