2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of mathematical model of network-type convective heat transfer system derived from human circulatory system
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21H01262
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
巽 和也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90372854)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マイクロ流路 / TRI法 / ナノ・マイクロ現象 / 確率論 / 決定論 / 数値解析 / ネットワーク構造体 / 血管網 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノスケールの空間分解能を持つサーモリフレクタンスイメージング(TRI)法を用いた温度計測装置に高精度位置決め装置の導入および動的制御アルゴリズムの適用を行い,装置の測定精度向上に成功した.2021年度は,COVID-19(新型コロナウィルス)の感染拡大の影響により,ナノスケール位置調整装置の導入および海外渡航の制限による海外研究協力者のProf. AlamやProf. Koとのナノ材料およびモデルに関する連携で遅れが生じたが,課題であったサーモリフレクタンス係数が小さい材料(Ag)について十分な分解能を達成するための位置決めと焦点機構の改良および試料の冷却の高速化(マイクロ秒のオーダ)を達成できた.さらにネットワーク構造体での電気・伝熱・流れに関する数値解析プログラムを開発した.このプログラムにより求めた構造体の温度分布をTRI法で測定した温度分布と比較し,両者が一致するようにネットワーク構造体の各節での抵抗に関する最適化問題を解くことで抵抗値分布も求めることができた.これにより,ネットワーク構造の各節の抵抗により輸送・伝熱経路が大きく影響され,分布特性を支配する要となる点が存在することを明らかにした.またそれらの特性はWeibull確率統計関数により評価できる可能性を示した.これらの成果により,申請者らは若手優秀講演フェロー賞を受賞した. マイクロ流路内の確率連結を有する問題として,格子状マイクロ流路での粒子流れと充填・閉塞現象について実験および数値解析により解析と評価を行った.その結果,確率論の事象のみに基づく流路閉塞とそれに伴う圧力損失の変化は従来の多孔質体・充填モデルで評価できるが,閉塞が流れに影響する場合(決定論的現象)は,圧力損失はこれらのモデルでは表現できず,加速特性を表す時定数を付加する必要があることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サーモリフレクタンスイメージング(TRI)法を用いた温度計測技術の測定精度の向上のため,位置決め装置の導入および動的制御アルゴリズムの適用を行った.位置決め装置の納期や国際研究協力者への訪問がCOVID-19(新型コロナウィルス)の感染拡大の影響で遅れが生じたが,装置への取り付けおよびナノワイヤを用いた実証試験を完了させ,光の回折限界以上の空間分解能でナノ構造体の温度分布測定を可能とした.また,数値解析により,ナノ構造体での伝熱,電気,流動を解くプログラムを開発した.これにより,物性値・境界条件・節等の構造体内の諸条件を設定することで温度特性を評価することができる.これに高速行列解法および最適化法を適用することで,各パラメータの最適化を短時間で行いながらTRI法により測定した温度分布との比較できるスキームを開発した.この結果,TRI法によりネットワーク構造体の温度分布が測定できるだけでなく,諸物性・物理量も求めることができる. 血管網を模擬した確率連結を有するマイクロ流路での流動・伝熱計測では,格子状マイクロ流路を製作した.これを用いて血球・血栓を模擬した粒子流れでの流路閉塞現象の可視化計測と,通電加熱透明壁での伝熱特性の予備的実験を進めた.流路閉塞の解析には前述のプログラムも活用し,粒子流れと粒子充填による流路閉塞を計算し,それ伴う流路の圧力損失の変化を解析した.流路充填は確率論の事象として扱い,それによる流れへの影響(決定論的現象)も考慮した連成解析を行った.その結果,確率事象(ランダム事象)に基づく従来の数理モデルは圧力損失特性を十分に評価できないことや,連成解析とそれを含めたモデルの開発の重要性を明らかにした. 一方,COVID-19により,予定していた国際会議での発表および国際研究協力者への訪問が延期した.これにより試料作製と旅費に関する予算は繰越を申請した.
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Strategy for Future Research Activity |
サーモリフレクタンスイメージング(TRI)装置の高精度化が達成できたことにより,ナノスケール構造体の温度分布計測と数値解析との比較検討のスキームを高度化し,ネットワーク構造体の節・バルクでの熱抵抗・伝熱・電気・流動の諸特性を解明できる技術の開発を進める.また,確率連結を有する現象として,エレクトロニクスデバイスで長年課題となっているエレクトロマイグレーションとその熱特性の動的計測と解析を行う.エレクトロマイグレーションはAlのマイクロ・ナノ配線に電流を流し,主にカソード側でのボイドの発生と成長およびAl線の破断の可視化と温度分布の測定の行い両者の関係を検討する.この現象は電気と伝熱現象に基づくものであるが,電流(電子の流れ)と流動の相似性が成り立つため,本研究で開発した計測技術および確率論・決定論のモデルの適用による現象解明を目指す. これに加えて確率連結から構成されるネットワーク構造体を有するマイクロ流路の沸騰(気泡発生・成長・移動),流動特性,壁面熱伝達率の特性を評価するための実験を開始する.ネットワーク構造体の流路製作はすでに完了しているので,壁面加熱時の気泡の可視化を高感度・高速度カメラにより測定を行う.さらに,壁面熱伝達率は通電加熱した壁面をサーモグラフィ(IR)カメラおよびTRI装置を用いて行う.さらに,流体の温度計測と流路の圧力損失計測を行う必要があるが,流体温度計測には申請者らが開発した蛍光偏光法を適用する.この蛍光偏光法の感度と空間分解能を増大するため,局所プラズモン共鳴を利用した蛍光増強の機能を持つナノプローブの開発および研究協力者の栗山助教とともにエバネッセント場を利用した壁極近傍(ナノスケール)での計測技術の開発も行う.
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