2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of mathematical model of network-type convective heat transfer system derived from human circulatory system
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21H01262
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
巽 和也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90372854)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | TRI法 / マイクロ流路 / 分岐・合流 / 温度計測 / ナノワイヤ / 沸騰 / エレクトロマイグレーション / 熱交換器 |
Outline of Annual Research Achievements |
サーモリフレクタンスイメージング(TRI)法に基づく温度計測装置を用いて確率連結を有するネットワーク構造体における流れによる熱輸送と熱特性の評価および数理モデルの開発を行った.研究対象はナノワイヤ群での電気の流れ(電流)と伝熱特性,エレクトロマイグレーション(EM)における電流と物質(原子)輸送の熱特性,そしてマイクロ流路での粒子輸送および沸騰での気泡生成と輸送特性である.ナノワイヤ群では,TRI法を用いて計測した温度分布と数値解析により求めた温度分布を比較することで,ネットワーク構造体を流れる電流の分布を求め,節の抵抗やナノワイヤ数密度(経路数)による経路や電流・温度分布に与える影響を明らかにした.その空間での確率連結での流れの特性がWeibull確率統計関数により評価できることを示した.EMの研究では通電したAl線での電子・原子の流れに基づくEMによる空孔欠陥・ボイドの生成と成長およびAl線の破断の熱特性をTRI計測により評価した.その結果,ボイド面積の増加率は時間に対して3段階で変化すること,特に2~3段階目の特性には電流分布と伝熱特性が影響し,パーコレーション理論で説明できることを明らかにした.これらの成果により申請者らのグループは日本機械学会の若手講演フェロー賞および関西支部賞(研究賞)を受賞した. 格子状マイクロ流路での粒子流れと沸騰現象に関する実験では継続して粒子充填と流路閉塞および沸騰での気泡の生成と成長の可視化を行った.そのなかで,蛍光偏光法を用いたマイクロ流路の流体温度計測の精度向上を目指して,局在プラズモン共鳴による蛍光増強効果を実装したAg粒子型ナノプローブの開発を行った.蛍光強度の増幅により約100nmの単一粒子の蛍光偏光度を測定することができ,局所微少領域の温度測定を可能とした.この成果により日本機械学会若手講演フェロー賞を受賞した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
サーモリフレクタンスイメージング(TRI)法を用いた温度計測装置はz軸方向のピエゾ式高精度位置決め機構を実装することで焦点合わせの高精度化に成功した(備品購入).これを用いて,Agナノワイヤ(NW)のネットワーク群に電流を流したときの温度分布を計測し,数値解析結果との比較と評価関数の最小化問題を解くことで,電流密度(電流経路)と接点・節の抵抗の測定に成功し,NWネットワークでの電流経路とNWの数密度と接点抵抗の関係を明らかにしただけでなく,ナノスケールでの新たな電流分布計測法を提示した.Al線でのエレクトロマイグレーション(EM)によるボイド生成・成長の評価では,ボイド分布およびボイド間での電流経路がネットワーク構造を持ち,ボイド領域の時間発展はネットワーク対流伝熱機構と類似する特性を示す.このボイド・温度分布の非定常特性をTRI計測を用いることではじめて明らかにした.さらにAl線の平均温度が異なる場合でのボイド領域の時間変化を測定し,平均温度によりボイドの生成位置と連結特性が変化することを明らかにした. ネットワーク型のマイクロ流路での伝熱特性と沸騰現象に関する実験では,加熱壁を有する格子状流路の製作と高感度・高速度カメラを用いた沸騰(気泡の生成・成長・剥離)特性の可視化計測系を完成させ,流れと気泡の分布の時間変化の測定を進めている.また流体の温度計測には申請者が開発した蛍光偏光法を用いるが,その信号増幅のため局在プラズモン共鳴を生むナノプローブを製作した.このプローブは直径70nm程度のAg粒子を厚さ5~10nmのシリカで被膜し,その表面に蛍光分子を標識したものであり,局在プラズモン共鳴による蛍光増強効果を最大化できる.これを用いてナノ粒子1個単位で蛍光偏光度の測定による液体温度計測が可能であることを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
サーモリフレクタンスイメージング法を用いたナノワイヤのネットワーク群とエレクトロマイグレーションの電流・熱特性評価に関する研究は計測と解析データ数を増やし,確率統計解析に基づく一元化したサーマルコンパクトモデルの開発を進める.ネットワーク構造を有するマイクロ流路では格子状流路の壁面熱伝達率を測定するため,サーモグラフィ(IR)カメラを用いた壁面温度計測の測定精度を向上させる.カメラの分解能を高めるため1画素5マイクロメートルのIRカメラ用のレンズを実装する.これに加えて壁面熱伝導率・壁面厚さを小さくすることで測定の空間分解能を高める.これにより沸騰による局所壁面温度の減少と気泡による流動分布の変化による「つぎの」沸騰の発生位置やタイミング,気泡の成長特性に与える影響を検討する.沸騰・気泡の生成はランダム現象であるが,その発生確率は壁面温度・伝熱の影響を受ける.決定論的現象である流動と沸騰・ボイド率の変化・気泡の空間分布との関係を確率統計関数とパーコレーション理論を用いて評価を行う.さらに並列流路での沸騰現象における流量分配特性やドライアウト領域の空間・時間特性について同様の計測系と評価法を用いて検討を行い,開発した数理モデルの有効性を検証する.これらの結果から分岐・合流の要素から構成される流路の形状とその流動・伝熱特性の関係を明らかにし,それを基に伝熱・温度分布が均一となる熱交換流路の形状の設計を検討する.
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