2022 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamics of liquid-solid contact on a hot solid surface that determines quenching point
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21H01264
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河野 正道 九州大学, 工学研究院, 教授 (50311634)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 相変化伝熱 / 液滴蒸発 / ライデンフロスト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では加熱履歴による表面の濡れ性の変化を調査し,さらにクエンチ現象の素過程である液滴の衝突・蒸発過程を詳細に観察した.試料には直径50 mm,高さ12 mmのSUS304を使用し,実験は新たに開発した環境制御型チャンバー内で行った.雰囲気ガスをアルゴンとすることで,試料の表面酸化による影響を抑えている. 試料の温度を400 Cまで上昇,400 Cから下降,400 Cまで再上昇,400 Cから再下降させて液滴の蒸発挙動を見た結果,上昇過程とそれ以降の3つの過程で大きく挙動が異なった.また,400 Cまで加熱した後に行った3つの過程の蒸発時間の最大となる試料温度は,最初の上昇過程より高い温度へと遷移しており,遷移沸騰領域の蒸発時間は短くなった.この傾向は,アルゴン雰囲気および空気雰囲気のいずれの条件でも共通して確認された.試料の温度を一度高温まで上昇させると濡れ性が良くなり,その後は温度を低下しても濡れ性はよくなったままで変化しないことが分かった. 空気雰囲気およびアルゴン雰囲気における実験にて生じた違いとしては,核沸騰領域において,アルゴン雰囲気では試料を400 Cまで加熱した後の3つの過程の蒸発時間が最初の上昇過程よりも短くなっていたのに対し,空気雰囲気では長くなっていた.これは,空気雰囲気で加熱した場合には,酸化皮膜が生じることで,試料表面から液滴への伝熱量が低減したことが原因であると考えられる.また,膜沸騰領域において,アルゴン雰囲気では蒸発時間のばらつきが大きかったが,空気雰囲気ではばらつきが低減されていた.空気雰囲気では薄い酸化皮膜が生成し,液滴蒸発過程に影響したものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で開発した環境制御型チャンバーの特徴を生かし,金属試料の温度上昇に伴う酸化皮膜の生成を抑制した状況で,固体表面の加熱履歴による表面の濡れ性の変化とそれに伴う,液滴蒸発時間の変化を捉えることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究から,液滴の蒸発挙動や蒸発時間に金属表面の加熱履歴に伴う濡れ性の変化が影響すること,雰囲気ガスの種類によって挙動が異なることが分かった.今後の課題としては,加熱履歴によって濡れ性が変化する原因の探求および,表面粗さが与える影響を把握する必要がある.これまで用いてきたラマン分光に加えて,X線光電子分光や赤外分光を導入し,より緻密な表面分析を用いる計画である.
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Research Products
(5 results)