2021 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of 3D stereolithography technology by non-contact magnetic support operation
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21H01308
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大路 貴久 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (30334709)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 磁気支持 / 磁気機能性流体 / 光造形 / 磁性微粒子 / 光硬化樹脂 / アディティブマニュファクチュアリング |
Outline of Annual Research Achievements |
まず現有の磁気支持装置に対し光造形を組入れる改良を行った。天吊りされた電磁石はXY方向に走査され,かつ,光硬化点を電磁石の走査に同期させる必要がある。このため電磁石中心軸にレーザー光路を確保する電磁石形状を採用した。また,制御・電力環境としてDSP(dSPACE, MicroLabBox),バイポーラ電源(NF回路, BP4610)を準備し,治具等は3Dプリンタ(Formlabs,Form3)で製作した。光硬化用レーザーは青紫色(405 nm)を使用することとし,磁性流体頂点の位置決め制御用変位センサのレーザー光(650 nm)と干渉しないよう配慮した。現在,光造形システムに向け,XY走査プログラムと磁気浮上制御プログラムの連動状態を確認中である。 磁気機能性流体として光硬化性を付加した磁性光硬化樹脂液を作製・評価した。レジン液(UV硬化)に,四酸化三鉄(平均粒径1 um, 10 wt%),増粘剤(カルボキシメチルセルロース, 5 wt%)を調合した液体に対し経過時間と分散性を評価した。この液体は,上記磁気浮上装置を使用してシャーレ内での円錐頂点位置決め制御を実現している。分散性評価の結果,数時間程度の均一分散状態が限界であった。増粘剤の追加は分散状態が向上する反面,磁性及び光硬化性を低下させる。引き続き磁性光硬化樹脂液の改良を続けると同時に,均一分散維持のための攪拌や短時間硬化のための光強度調整を検討する。 磁性光硬化樹脂液の供給方法として導管送液実験を実施した。導管(外形10 mm,内径8 mm)の周囲に三相螺旋コイルによる励磁実験では,送液方向および周方向の突極性が送液力を生成するが,磁性流体では管内で十分な送液力を生成できず断念した。一方,永久磁石スキューを用いた管内送液方法を発案し,半月型のベーン形成が確認されたことで非接触送液手法の可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
磁性流体液滴に対する非接触磁気支持技術とAM技術による光造形を融合した新しい造形手法の提案と確立を大目的とし,本年度は「磁気支持操作装置の製作」,「磁性光硬化樹脂液の作製」,「浮揚液滴に対する光照射時の固液移行現象の解明」,「磁性光硬化樹脂液の供給」を全方位的に実施する予定であった。また,これらが一部未達でもある程度の目途が立った時点で一度全てを組合せ,問題点や不具合を繰り返し調整することを本年度の目的としていた。 磁気支持操作装置の製作について,磁気支持用制御電磁石の平面走査,レーザー光路付き電磁石の設計,周辺制御機器の整備,光源の非干渉性の確認等を実施した。また,磁性光硬化樹脂液の作製については,磁性粒子,光硬化樹脂液,均一分散用増粘剤を調合し実使用に耐えうる磁気機能性流体かどうかを評価した。これら2つの項目は,ものづくり系実施項目であり本申請期間で改良を重ねていく部分である。新たな課題も表出しており,より加速実施する必要はあるものの概ね順調に進んでいる。 浮揚液滴に対する光照射時の固液移行現象の解明について,作製した磁性光硬化樹脂液の非接触磁気支持(液錐頂点位置決め制御)は確認済みである。固液移行現象は液滴支持の確立により実施されることが望ましい。光硬化時には環境温湿度に加え,硬化点での磁場,発熱,体積変化等も調査する必要があるため測定系の準備・構築が急がれる。磁性光硬化樹脂液の供給については,導管を用いた磁性流体の間欠供給実験を行うに留まった。新方式の可能性も含め引き続き間欠供給実験を進める。一方,毛管現象と磁気力を利用した磁性光硬化樹脂液の引上げは未実施であり早急に実施したい。以上を総合すると,進捗状況はやや遅れているという認識である。
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Strategy for Future Research Activity |
磁気支持操作に光造形機能を付した装置の完成と基本図形試作が今年度の目標である。前年度,全方位的に実施してきた各項目に対し一定の成果を得たうえで光造形システム化に組み上げる段階となる。 磁気支持用制御電磁石の平面走査やレーザー光路付き電磁石設計等,機構的な準備は進めたが,レーザー光源は新たに今年度購入予定であり,光量制御やレーザー保護環境整備等の準備が残っている。また,3D造形の上下方向の粗微動には,制御ギャップの目標値変化とzステージ移動の併用を予定しており機材準備を進める。 磁性光硬化樹脂液は,元来重要となる機能(磁性,光硬化性)を優先し均一分散度は攪拌等での対応となる可能性がある。引き続き最適な磁性光硬化性樹脂液の作製を目指して改良を重ねる。新規購入予定のレ-ザー光出力との兼ね合いとなるが,基本図形試作により,液体硬化時間と供給・走査時間の初期段階値が得られるよう開発と実験を進める。 3D光造形の観点からは,磁性光硬化性樹脂液の液錐頂点をコントロールすることで一定の成果が得られる。一方で磁気浮上制御中の磁場化での光照射による固液移行現象を解明するには液滴浮上状態の観察が望まれる。測定(硬化点での磁場,発熱,体積変化)では,現有機材(サーモグラフィ,高速度カメラ等)や汎用数値解析ソフトを使用し新知見を得る予定である。 液体供給は,新方式(磁性流体スパイクによる非接触送液)のための実機製作と検証実験を行うとともに,実用上不可欠な毛管現象と磁気力を利用した液体引上げを実施する。磁気支持状態を保ちつつ,引上げた磁性光硬化樹脂液を硬化させながら,制御電磁石を平面走査させることで基本図形試作に繋げる。以上が推進方策である。
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