2022 Fiscal Year Annual Research Report
Creation of 3D stereolithography technology by non-contact magnetic support operation
Project/Area Number |
21H01308
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
大路 貴久 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (30334709)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 磁気浮上 / 磁気支持 / 光造形 / 磁性光硬化樹脂液 / 3Dプリンティング / AM技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
現有の磁気支持装置に対し,光造形機能を付した装置(初号機)を完成させた。各構成要素を維持しつつ装置を組み上げる際,提案する磁気支持3D光造形方式に特徴的な構造制約や造形手法制約が知見として得られた。また,初号機による基本図形の試作を行い造形手順と現状の問題点を明確化した。 磁気支持用電磁石にレーザー光路用スルーホール(最小部φ1.6mm)を追加工した。スルーホールを通過するレーザーはより集光された平行光である必要があることから,光源-電磁石間光路に両凹マイクロレンズを挿入し光径1.0 mmでアフォーカル系を設計した。光学系と磁気浮上系を組み合わせた構造体を水平運動させる際,筐体の振動や光路の微小ズレが生じた。これらは3D光造形において致命的であるため,レーザー光源,平行光用レンズ,スルーホール付き電磁石の中心軸の一致をマストとし,リザーバ側をXYZステージで移動させる方式が賢明であると判断した。 調合割合を決定した磁性光硬化樹脂液(mPCR液)に対し光硬化試験を行った。1点および水平(正方)走査による硬化試験で,光出力,光路距離,走査速度,造形幅,造形厚の関係を調査した。一般的な結果(大出力,近距離,低速度で造形幅増)のほか,造形厚が最大約0.5 mmといった特徴が得られた。これはmPCR液の光吸収性と透過限界で定まる値と考えられる。磁気支持光造形試験では,垂直造形の4手順(①リザーバ内にサポート治具を立て,その先端まで吸い上げたmPCR液を位置決め制御,②頂点の光硬化・サポート先端との固定,③リザーバ側を降下し1層目の上に小さな液錐を形成,④1層目の上で2層目を硬化)を試験した。手順①,②,④はそれぞれ独立に実験し達成したが,手順③では,1層目が傘状に硬化したことで2層目のmPCR液の吸い上げに至らなかった。今後,光出力制御および吸引力制御の設定変更により改善を図る。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度当初予定として磁気支持式3D光造形装置(初号機)の組み上げ(完成)と,初号機での基本図形造形試験が目標であった。全体像として装置を組み上げることで構造的特徴(制約)の知見が得られた点で一つの目標は達成したと考える。一方,初号機での基本図形造形において,磁気支持状態での光造形手順(手順①から④)のうち手順③(リザーバ側を降下し1層目の上に小さな液錐を形成)が未達であった。知見に基づき,より集光度の高いレーザー光の準備と制御電磁石の改良を施した2号機が完成間近であり,光出力制御,吸引力制御を行うことで上記全手順の完遂を目指す。 磁気支持式3D光造形装置の構造体としての方向性は明らかとなり,一部磁気支持状態ではないものの,磁性光硬化樹脂液(mPCR液)の光硬化による基本図形造形が可能であったことから産業応用上の道筋が見えた。一方で,学術的側面として,mPCR液滴(1滴)を磁気浮上させた状態での光照射による固液移行現象の解明が未達となった。理由として,達成済みの磁性流体液滴浮上とは異なり,mPCR液の粘度が高く液滴を作製することが困難であったためである。繰り返し実験を重ねているが成功の見通しが立っておらず何らかのブレークスルーが必要である。 さらに,液体の連続供給も造形システムの一部として重要な要素技術である。年度当初,磁性流体のスパイク現象を利用した磁性流体の非接触送液を目指したが,簡易装置による検証実験で実現困難であることが判明した。スパイクは混合しない別の流体に反力を与えるが,同一の磁性流体ではスパイクをすり抜け反力が得られないことから断念することとなった。今後は,mPCR液を光造形位置まで連続的に吸い上げる方法として,電磁石の吸引力とサポート治具表面の毛管現象を併用する方式で対応する。以上を総合すると,進捗状況はやや遅れているという認識である。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度の当初計画は,「磁性光硬化樹脂液(mPCR液)の磁気支持による一次元・二次元操作造形基礎実験」,「磁気支持光硬化による基本図形造形」,「非接触3D光造形,造形度評価」である。 「mPCR液の磁気支持による一次元・二次元操作造形基礎実験」は前年度からの継続課題である。初号機にて,制御電磁石のスルーホール確保とレーザー光の光学系デザインにより,液錐頂点と光焦点が常時一致する状態が得られており,リザーバ(液溜り)側を三次元位置操作することで液錐頂点を光硬化させる。未達の手順③で,初号機での垂直造形(光硬化)試験を繰り返しており,また2号機も完成間近であり,継続的に実施する。 「磁気支持光硬化による基本図形造形」は,立方体等の基本図形を作製する上で2つの難関がある。1つはmPCR液の液錐状態での連続供給である。mPCR液を電磁石の吸引力で引き上げるためのサポート治具をリザーバ内に設置し,次のmPCR液が治具に待機した状態で液錐頂点の光硬化を実現している。硬化が完了した点からリザーバ側を水平,垂直に動かしつつ光出力および吸引力を調整してmPCR液を所望の位置に誘導し硬化しなければならない。2つ目は,次第に出来上がる造形物の重心バランスの問題である。まずは,重心位置を極力ずらさないような造形手順を設定し造形物をつくる。このとき,重心の水平位置ずれの許容量を評価する。 「非接触3D光造形,造形度評価」は,本手法による光造形限界を調査するフェーズである。微小・高精細,造形物の高さや幅といった寸法限界,造形速度限界,光造形後の造形物の特徴等本手法の仕様を纏める。これまでの未達分(mPCR液滴浮上による固液移行現象の解明)も含め,装置の高度化,mPCR液の評価・改良等を継続的に実施しながら,本手法による3Dプリンティングの基盤技術の確立を目指す。
|