2022 Fiscal Year Annual Research Report
小型電池推進船の環境対応性を高める半波整流可変界磁モータの開発
Project/Area Number |
21H01315
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
阿部 貴志 長崎大学, 工学研究科, 教授 (30222649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜崎 真一 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (80363472)
横井 裕一 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (80610469)
大道 哲二 長崎大学, 工学研究科, 助教 (50739175)
大友 佳嗣 長崎大学, 工学研究科, 助教 (60964442)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 可変界磁モータ / 電池推進船 / 同期モータ / ダイオード整流 / ブラシ無し自己励磁 |
Outline of Annual Research Achievements |
全研究期間では,(a)電磁界解析を用いて(a-1)低船速・低トルク領域と(a-2)高船速・高トルク領域での高効率・高トルク設計に取り組み,(a-3)全船速・全トルク領域へと展開した試作機を作成する。また,(b)船舶負荷に対応可能な制御法の確立と実機検証,さらに,(c)シミュレーションを用いた電池推進船に適用した際の特性検証を実施する。 2022年度において, (a-2) 本領域での検討は2021年度からの継続課題であり,2021年度に終了した(a-1)の結果と合わせて4極と6極に絞り,巻数比や回転子突極形状について,本領域における固定子電流を最小にする設計指針を検討した。一方でトルクリプル低減を目的としてトルク電流にリプル低減電流を重畳する方法について実験とシミュレーションで検討した。さらに,インバータの電圧と電流制限を考慮してリラクタンストルクを併用した最大トルク/電流制御法の適用を検討した。 (a-3) (a-1)と(a-2)の結果により,低船速・低トルクと高船速・高トルク領域にて,固定子と回転子の巻数比や回転子突極形状が共有できる形状として6極構造を採用し,試作機に向けた詳細設計を実施した。 (b) 共振リアクトルなどの納期遅れにより繰り越し課題であった昇圧DC-DCコンバータを導入した制御システムによる実機検証を実施した。その結果により制御ゲインや制御周期の再検討を目的とし,シミュレーションにより再度検証した。またリラクタンストルクを採用した際の昇圧DC-DCコンバータ制御システムでの電圧昇圧範囲の検討のために,現状システムにおける基礎特性試験を実施した。 (c) 電池推進船のエネルギーフローをモデル化し,バッテリとインバータをモデル化し,さらにIPMモータモデルを利用した電費演算モデルを構築した。なお,(a-3)で検討したモデルを導入する予定であったが,翌年への課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(a-2)2極機や8極機では出力の低下が顕著となり,同じ出力を得るためには損失が増加し効率が低下した。そこで4極と6極に絞り,巻数比や回転子突極形状について再検討した。結果として,この領域における固定子巻線電流を最小にし,効率を向上するには6極機を採用し,固定子はスロット数54で8ターン/スロット,回転子は90ターン/ポールに決定し,3000rpmや4200rpmにおいて95%を超える効率を得た。 一方でトルクリプルは,採用した巻数比や回転子形状にて30%となり,高船速での許容範囲に抑えられることを確認した。また,トルクリプル低減については,正弦波状のリプル低減電流を重畳することで,半波励磁に必要なバイアス周波数成分と同じ周波数成分の低減法を確立した。さらに,リラクタンストルク併用最大トルク/電流制御法について,シミュレーションで検討し,実機で測定可能な1800rpmまでの範囲での比較にて有用性を確認し,3000rpmや4200rpmにおける,半波励磁のための励磁電流指令とリラクタンストルクのためのトルク電流指令の最適な制御パラメータを得た。 (a-3) 試作のための詳細設計結果として,(a-2)に記載の巻数比やターン数の他に,毎極毎相スロット数3で短節分布巻(7/9),固定子コアには半波励磁の高周波を考慮して10JNEX900を,回転子コアには35H300を採用し,回転子コアにはスキューを設けた。以上にて実機を試作し,予定通り2月に納品が完了した。 (b) リラクタンストルクを併用した際の電圧昇圧範囲を再検討し,昇圧電圧範囲を280Vから320Vへ変更し,電圧不足による界磁磁束の低減を解消し,さらに定電圧範囲における電圧制御の必要性も実証した。 (c) IPMモータを用いた船舶駆動システムの電築演算モデルは終了しているが,上記で試作したモータモデルの導入は次年度の課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては, (a)モータ設計:特性改善に向けた最適設計 昨年度の成果である試作機を用いた下記(b)にて取得する基礎特性の実験結果と解析結果を比較し,解析モデルの有用性を確認する。また,試作工程によって生じる解析モデルとの形状の差異や磁気特性の変化を考慮して解析モデルを変更し,下記(c)で使用するビヘイビアモデルを作成する。さらに,昨年までの(a-1)と(a-2)の領域を重視した(a-3)全船速・全トルク領域での検証だけでなく,重視した領域から離れていた低船速・高トルク領域での特性改善に向けた最適設計を続け,モータ改良の必要性に応じて,改良箇所の再設計を実施し試作モータを改良する。 (b)実機検証:試作機による検証と制御法の確立 昨年度の成果である試作機に対して基礎特性試験を実施し,また,リラクタンストルクを併用する高トルク/電流制御法を適用してトルク・効率特性を取得し,各課題(a),(c)へ転用する。さらに,試作機に対して昇圧DC-DCコンバータを導入した制御システムによる高効率・高トルク化の実証試験も実施する。その際にモータの温度上昇を観測するために温度測定システムを導入する。 (c)シミュレーション検討:試作機モデルを用いた特性解析 昨年度までの成果である電池推進船の特性検討モデルに対して,試作機のビヘイビアモデルの導入方法を検討し,シミュレーション時間に負担をかけない縮約モデルを作成する。また,船舶の航行パターンを模擬した速度とトルクのプロファイルデータを作成し,上記(b)で検証した制御・ドライブモデルも挿入することで,電池推進船の電費特性を算出する。
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