2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of functional waveguide for 6G by high-definition 3D printing technology
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21H01320
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三尾 典克 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (70209724)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高精細高速光造形技術 / 樹脂表面めっき技術 / 次世代無線通信技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、100GHz帯、220GHz帯でのバンドパスフィルタ(BPF)や方向性結合器(DC)等の機能性導波管デバイスの実現を目標としている。100GHzあるいは200GHzの電磁波の波長は、3㎜および1.5㎜で、その帯域での国際規格で定められた導波管断面サイズは、2.54㎜×1.55㎜あるいは1.30㎜×0.65㎜である。このサイズの場合、ストレート導波管の作製は、従来からの機械加工で可能であるが、BPFやDCの作製では、100μm以下の周期構造等の作製が必要となるが、そのような微細構造の作製そのものが非常に困難となる。さらに、将来、300GHz帯に高周波化すると、機能化導波管デバイスの作製は、ほぼ不可能となる。 一方、3Dプリンタは、積層造形を基本としており、機械加工の切断・切削加工とは本質に異なり、数10μmの造形精度が可能となり、さらに、積層造形がゆえに、トンネル構造や中空構造の造形可能である。このような造形上の特徴を生かすと、100GHz帯以上のサブミリ波帯での機能化導波管デバイス構造を造形することが可能となる。しかしながら、10μm程度の解像度を持つ3Dプリンタは、UV硬化樹脂を用いた方式とインクジェット方式に限られ、いずれの場合でも造形材料は樹脂であり、電気伝導性は非常に低く、電磁波を導波路構造に閉じ込めることは不可能である。この電磁波閉じ込め効果を実現するために、樹脂製導波管構造の表面に導電性を持たせる必要があり、これは、無電解めっきによって実現することを計画している。 この1年で、我々が開発したUV樹脂硬化型3Dプリンタ(開発コード名:RECILS)によって、100GHz帯から300GHz帯のストレート導波管構造の造形に成功した。また、その樹脂製導波管構造にめっきを施すことにより、金属導波管と同程度の導波特性(挿入損失)が得られることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、(1) RECILSでの造形が最適な導波管構造の設計とその3D造形条件の最適化を行う。(2) 300GHz帯導波管は、導波管断面サイズは0.86㎜×0.43㎜と細く、さらに長さは、25㎜~50㎜と長い。それに加え、樹脂製構造物表面での撥水性のために、めっき液に挿入がほとんど不可能である。この問題を解決するために、300GHz帯樹脂製導波構造を対象とし、その内壁にめっき膜を形成する技術を確立する。(3) 100GHz帯から300GHz帯でのBPFとDCの構造の設計と造形技術を確立する。の各項目を進めてきた。 (1)に関しては、導波管の力学的な強度と造形機の特徴とを考慮に入れ、長さ1インチの300GHz帯の導波管を設計と造形とを行った。その結果、ほぼ設計通りの造形が可能であることが確認されたが、設計値に対して20μm~30μmのずれが生じることが分かった。この解決法は、現在も継続検討中である。(2)に関しては、ニッケルを下地として、その上に銅(3μm程度)、金(0.5μm程度)の積層構造をめっきで作製した。この導波管の挿入損失は、225GHzから335GHzで-0.6~-1.0dBで、市販の金属導波管と同程度の特性が得られることを確認した。(3) のBPF及びDCは、導波管内に周期構造を作製する必要がある。この周期構造は、すでに報告されている100GHz帯でのBPFとDCの構造を参考に、200GHzおよび300GHz帯の構造を設計した。300GHz帯では、導波路内に100μmから300μmの周期構造の造形が必要である。この微細造形の可能性について検討し、これまでに、200GHz以下でのBPFあるいはDCの造形は可能であることを確認した。現在、300GHz帯での機能性導波管デバイスの造形条件の最適化を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
目標としているサブミリ波帯域での機能性導波管デバイスの実現に向け、以下の項目を進める。 (a) これまでの成果で、RECILS製導波管でも、市販の金属導波管とほぼ同程度の挿入損失を確認したが、3Dプリンタは積層造形であるために、造形面では積層面に起因する周期的な凹凸が存在し、この凹凸による散乱、反射の影響が懸念されている。周期構造の導波特性に与える影響をシミュレーションし、実験との比較から検討する。 (b) 導波管のような細いトンネル構造でのめっきでは、めっき液の流入方向に対して、めっき膜が薄くなることが懸念される。めっき厚の場所依存性を確認するために、作製した導波管をどの長手方向に沿って分割し、導波管内部でのめっき厚をX線蛍光分析によって評価を行う。また、めっき厚が、導波管中央部でも十分に確保できるめっき方法を確立する。 (c) ミリ波帯導波管の造形に加え、ホーンアンテナ等の加工可能性の検討を開始する。特に、アンテナの1種であるコルゲートホーンアンテナは、ホーンアンテナと比較し、サイドローブの低減に効果があるが、ホーン部内壁に周期構造を形成する必要があり、機械加工では困難な構造である。これまでは、機械加工では厳しい微細構造の実現を目指してきたが、それに加え、構造自体が機械加工では困難は電磁波デバイスの造形も検討する。
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Research Products
(1 results)