2021 Fiscal Year Annual Research Report
量子雑音マスキングを用いた光・無線統合物理レイヤ暗号化通信
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21H01329
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
谷澤 健 玉川大学, 量子情報科学研究所, 准教授 (10709489)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 物理レイヤ暗号化 / 無線通信 / ミリ波 / 光ファイバ通信 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,超スマート社会を支える将来の通信システムのセキュリティ向上を目指して,不変・不可避な光の量子雑音の存在により信号の盗聴を防ぐ物理レイヤ暗号化を,光有線と電波無線が統合した通信システムにて実現することを目的としている.従来周波数の高い光波においてのみ定量的な安全性保証が実現可能とされてきたこの物理レイヤ暗号化を,申請者が独自に提案した光ヘテロダインを用いた手法により,電波帯のマルチキャリア無線通信に展開する.初年度(2021年度)は,量子雑音マスキングによる物理レイヤ暗号化の直交周波数分割多重(OFDM)への適用のための理論検討と電気領域での暗号化OFDM信号送受信の実験を行うことを計画した. 本年度は,まず,暗号化のため多値変調したOFDM信号を約1550nmの周波数の光で発生したときの量子雑音による信号マスキングの効果を明らかにすることに取り組んだ.光ヘテロダイン検波の半古典/量子理論を応用することでOFDM信号におけるマスキングの効果を定量的に示す式を導いた.この式を用いることで,適切な信号秘匿が得られる条件(変調方式,変調多値数,信号帯域,光パワー範囲等)を見積もることが可能となった.次に,理論検討により見積もった条件で,電気中間周波数(IF)にアップコンバージョンした物理レイヤ暗号化OFDM信号を光で送受信する実験を行った.5kmおよび10kmの光ファイバを伝送した後に,IF帯の暗号化信号が発生し,秘密鍵を用いて復号できることを示した.復号後の信号は,無線通信に必要とされる品質の基準を満たしているものの,光ファイバ伝送により若干の劣化が生じた.この原因を追究し,実験で採用した粗密光強度変調の影響であることを明らかにした. 以上の研究成果を,国内学会で発表したほか,IEEE発行の光ファイバ通信分野の代表的な論文誌にて報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画した電気領域での暗号化OFDM信号送受信の実験が年度前半に順調に進んだことから,二年目に計画していた光送受信実験を前倒して実施することがきた.その際,当初想定していなかった光ファイバ伝送による信号品質への影響が明らかになったが,その後の検討で原因を解明することができた.このように当初計画を上回る進捗を得ることができている.
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度(二年目)は,昨年度に判明した光ファイバ伝送による信号品質への影響を抑える方法の実験検討を進める.その際,伝送容量への影響を軽減するために新たな変調方式を導入することを検討する.それに伴い,理論検討においても新たな変調方式への対応を行う.また,より実験との整合が取りやすいように理論を修正して,光・電波をシームレスにつなぐこの物理レイヤ暗号化システムの設計論の構築を進める.
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