2021 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導センサーを用いたパッシブ型テラヘルツ光ナノスコピーの開発
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21H01340
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
有吉 誠一郎 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 准教授 (20391849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
莅戸 立夫 富山大学, 学術研究部工学系, 准教授 (00261149)
廣芝 伸哉 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (40635190)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | テラヘルツ/赤外材料・素子 / 超伝導材料・素子 / 超精密計測 / 高分子構造・物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高分子や生体材料などのソフトマテリアルの基礎物性分野に新たな分析手法を提案し確立すべく、テラヘルツ帯で動作する近接場顕微鏡技術(テラヘルツ光ナノスコピー)を創出することにある。具体的には、鋭く尖った金属探針を試料表面に近づけ、その局所から自然放出されたテラヘルツ光をフーリエ変換分光器で変調し、高感度の超伝導センサー(力学インダクタンス検出器、MKID)アレイで検出するシステムの構築を目指している。 1年目は、MKID開発を主軸として、計測システムを構成するハード・ソフト双方を構築することで、テラヘルツ光ナノスコピー実現への技術的基盤を築いた。さらに、適した測定試料を選定・調製した。具体的な項目は以下の3点である。 (A) システムのハードウェア構築 --- ハードウェアの構成要素は顕微鏡部、分光器部、検出器部に分類することができる。「顕微鏡部」に関しては、チューニングフォーク式の原子間力顕微鏡コントローラ、3軸ナノステージと3軸マイクロステージを新規導入し、低振動の光学定盤上に設置して動作条件を検討した。一方で「検出器部」に関しては、試作したMKIDの読出し系に同相直交ミキサをベースにしたデータ収集系を採用した。 (B) システムのソフトウェア構築 --- 本項目では計測制御ソフトウェア(LabVIEW)を用いて、検出器部の後段の出力データをPCに取り込むとともに、顕微鏡部や分光器部と同期させて制御するプログラムを開発中である。 (C) 測定試料の選定と調製 --- 本項目では顕微鏡部の空間分解能を評価する指標として、ポリスチレン‐メタクリル酸ブロック共重合体(PS-b-PMMA)のミクロ層分離構造を試作し、通常の原子間力顕微鏡を用いてミクロ層分離構造を観測した。指標として200、100、50 nm 程度の解像度となるテラヘルツ光ナノスコピー用サンプルを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目終了時には計測システムを構成するハード・ソフト双方を構築することで、テラヘルツ光ナノスコピー実現への技術的基盤を築き、かつ、測定に適した試料を選定・調製しており、2年目以降に行うハード・ソフトの組合せ動作試験、および測定試料の最適化の準備が整っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、前年度に構築した個々のハードウェアとソフトウェアを組み合わせた動作試験を共同で行う。また、分担者の廣芝は本テーマに適した測定試料の最適化を行う。具体的なアクションアイテムは以下の2点である。 (D) システムの組合せ試験 本計測システムはハードウェア(顕微鏡部、分光器部、検出器部)とソフトウェアに分類することができ、組合せ試験に際しては以下の3段階を想定している。まず、第1段階は「検出器部⇔ソフトウェア」の組合せであり、前年度から継続中の MKID 開発に加え、読出し系のシステムフローの予期せぬバグや問題点を洗い出す。計測制御には National Instruments 社製 LabVIEW を採用しており、代表者らの LabVIEW を用いた長年のプログラム作成経験やミリ波マイクロスコピー開発の経験を活かすことで、効率的にシステム最適化を図る。次に、第2段階は「検出器部⇔分光器部」であり、MKID の光学特性(検出能や応答速度、周波数スペクトル等)を明らかにする。特に、周波数スペクトル測定に際しては、テラヘルツ帯フーリエ変換分光器に内蔵した連続波光源および室温動作の焦電検出器も利用して多角的に評価する。そして第3段階は「検出器部⇔顕微鏡部」であり、まず分光器部を介さないことで、室温の試料表面からの局所的な近接場を確実に捉えることを目指す。 (E) 測定試料の最適化 本年度は、異なる分子量をもつポリスチレン‐メタクリル酸ブロック共重合体(PS-b-PMMA)の200、100、50 nm 程度のミクロ層分離構造を作製したサンプルを、テラヘルツ光観測に応じた最適化を行う。横方向の2次元的な解像度に加え、分光特性観測に必要なサンプルの厚みを同定する。また、通常の透過型テラヘルツ分光で PS および PMMA それぞれのスペクトルが観測できる限界厚みを評価する。
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