2021 Fiscal Year Annual Research Report
Bilateral Control Using Functional Electrical Stimulation for Teaching Object Manipulation Skills to Robot with Five Fingers
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21H01347
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
境野 翔 筑波大学, システム情報系, 准教授 (70610898)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 正之 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (00596497)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 機能的電気刺激 / 制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は機能的電気刺激を用いて手指の多自由度トルク制御をするための第1段階として、まずは、各指を独立に駆動できる選択性と指での発揮トルクを両立するための刺激方法を評価し、選択性と発揮トルクを両立するための条件をあきらかにした。特に他の指との干渉の大きい示指について、複数の筋を同時に刺激する際の刺激電極間の位相差の影響を評価した。実験結果より、位相差を大きくすると選択性が向上し、位相差を小さくすると発揮トルクが向上することが統計的に示された。また、刺激中に各電極間を導通させる場合と開放させる場合でも比較を行い、導通させた場合にのみ有意な発揮トルクの向上があることを明らかにした。 続いて、中指と環指を独立に駆動するための制御方法を開発した。中指と環指は屈筋を独立に刺激できるが、伸筋はどちらも共通した総指伸筋により構成される。よって、制御時には中指と環指の駆動トルクの干渉が発生する。そこで、本研究では屈筋と伸筋の差動トルクを用いて環指の駆動トルクを独立化した。これはすなわち、屈筋と伸筋を同時に刺激することを許容することを意味している。この差動トルクを用いて手指の位置追従実験を行った結果、制御時の二乗平均平方根誤差が中指で17%、環指で39%低減するという著しい結果を得た。 以上のように、1.手指の選択性と発揮トルクの両立の成功、2.差動トルクを用いた2指の独立駆動に成功したため、2年目以降の多自由度の手指の制御に必要な準備を予定通り達成したと評価できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では先行研究を参考にして、電極を平面的に配置し所望の筋を刺激できる電極を一組選択することで、手指の任意の関節を駆動できるものと想定していた。しかし、実際に実験してみると先行研究で報告されていたように手指を自由に駆動することは困難であった。先行研究ではオン・オフ制御であったため刺激後の手指関節の最終状態しか問題にしていなかった一方、本研究課題の達成にはトルク制御の実現が必須であり、必然的に手指間の過渡的な干渉をも考慮する必要があったことがこの相違の理由であると考えられる。一方、課題提案当初は高次の位相遅れが制御性能を大幅に劣化させると考えていたが、こちらについてはほとんど問題にならないことが判明した。これまでの研究代表者が問題にしていた高次の位相遅れは肘関節のような慣性の大きい関節で生じていたものであり、それが低周波数域での高次の位相遅れにつながっていたのに対し、手指関節は慣性が非常に小さく高次の位相遅れを無視しても問題なかったのだと考えられる。よって、本年度は高次の位相遅れを無視した位置制御系で手指の制御を達成した。 手指の多自由度バイラテラル制御の確立のためには、手指の多自由度位置制御が必要であり、本年度はそのうち3指の位置制御に成功した。示指・中指・環指は特に独立駆動が難しい指であるため、この3指を独立駆動することができれば、その他の母指、示指、小指を刺激することで5指の独立駆動は達成しうるものと考える。 以上のように想定外のことが2件存在したが、これらをあわせると概ね当初想定していた通りの成果を達成したと認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は2021年度に制御した示指・中指・環指の制御に加え、母指・小指の制御も行う。母指・小指を駆動する筋は他の3指から比較的分離されて配置されているため選択的な駆動は容易であると想定できる。よって、2022年度上半期は5指のトルク制御技術を確立する。つづいて、下半期からは異なる二人のヒトの手指間でのバイラテラル制御の研究に着手する。2021年度にあきらかになったように、中指・環指のトルク制御には屈筋と伸筋の差動トルクを用いた制御が必要であり、バイラテラル制御を実現する場合には差動トルクで駆動された手指間での遠隔操作技術を開発する必要がある。バイラテラル制御はこの差動トルクの和と差を用いて実現する制御系であるため、筋出力から2回の変換を行った系で制御系を開発する必要がある。このようなバイラテラル制御を2022年度中に完成させる予定である。 2023年度は2022年度に開発した5指のトルク制御技術とバイラテラル制御技術を統合することで5指のバイラテラル制御を実現し、当初の目的を達成する。また、あわせてバイラテラル制御時のヒトの官能試験も行い、機能的電気刺激を用いた擬似的な反力フィードバックがヒトに与える影響についても定量評価する。バイラテラル制御系の性能として満たすべき指標は位置と力の追従誤差である。一方、ヒトへの力覚提示として満たすべき指標は身体所有感や運動主体感などであり、制御系と力覚提示の指標を同時に満足することが不可能である可能性がある。この場合、従来のロボット間でのバイラテラル制御と機能的電気刺激を用いた疑似力覚提示によるバイラテラル制御では制御目標がことなることを意味しており、これを制御系設計にフィードバックしていく予定である。
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Research Products
(5 results)