2022 Fiscal Year Annual Research Report
Functional control of plasmons and phnons at nanoparticle interfaces on oxide semiconductor for thermal management
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21H01360
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 裕章 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (80397752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
依田 秀彦 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (30312862)
J・J Delaunay 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (80376516)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 酸化物半導体 / ナノ粒子 / 赤外 / 表面プラズモン / 遮熱 / 熱放射率 / 電気的制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
省エネ社会に向けて、窓から侵入する赤外光(太陽熱・輻射熱)を効率よく遮蔽する透明遮熱技術が必要である。本申請者は、赤外表面プラズモンを示す透明酸化物半導体ナノ粒子に着目して、赤外域で共鳴反射を持つ透明反射遮熱フィルムの創出を目指す。更に、遮熱の動的制御(スイッチ機能の実現)を行う。特に、透明反射遮熱技術の光学的特性(反射・吸収)が、どの程度の熱量や熱物性(日射熱・輻射熱など)を実際に制御できるのか、社会実装に向けて明らかにする必要がある。故に、従来技術の延長では解決できないエレクトロクロミック(機能性窓)やナノ粒子界面の光熱制御に基づいた新しい熱基盤制御材料に関する研究開発を本課題の目標とした。 2年目(2022年度)は、赤外エリプソメトリ分光を用い、Sn-doped In2O3 (ITO)ナノ粒子薄膜の光学応答(複素誘電率及び複素透磁率)を調査し、酸化物半導体ナノ粒子薄膜の反射共鳴に伴う低い熱放射率の実現を目指した。ITOナノ粒子薄膜は、赤外域でローレンツ共鳴を持った光学特性を示し、ITO連続薄膜とは異なった赤外光学応答を示した。この光学的な相違は、ITOナノ粒子薄膜が光メタマテリアルとして機能化したことに基づく。近赤外域の共鳴反射は、金属的性質な特性に由来し、中赤外域の共鳴反射は、入射光と反射光の干渉効果による。また、3次元電磁界計算から、ナノ粒子の形状・粒子間距離及び積層構造の変化に伴い、赤外域での共鳴反射性能は著しく変化しする。特に、立方体形状のITOナノ粒子を用いた場合、赤外域の反射率が85%以上に達する。この高い赤外反射共鳴は低い熱放射率に寄与し、赤外域全体における熱放射率は15%程度まで減少することを見出した。故に、ITOナノ粒子薄膜の構造制御は、赤外域の光学応答に強い影響を与え、高性能な遮熱特性を持つことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤外エリプソメトリ分光を用いたITOナノ粒子薄膜の赤外光学応答の実験的解析及び3次元電磁界計算を用いた理論的解析の実施から、ナノ粒子薄膜は低い熱放射率(低い輻射熱)を持つことを実証した点が、2022年度の研究進歩において重要な点となる。赤外エリプソメトリ分光を持ちいた複素誘電率の実験的評価は、ITOナノ粒子薄膜は光メタマテリアル(人工物質)として機能することを示した。更に、有限差分時間領域(FDTD)法は、ITOナノ粒子薄膜の電気・磁気共鳴等の光物性の解析を可能にし、ITOナノ粒子薄膜の小さい複素透磁率が高い複素誘電率を持つことを明らかにした。高い複素誘電率応答は、赤外域での高い共鳴反射に寄与し、低い熱放射率を与える。更に、ITOナノ粒子薄膜の熱放射率性能の理論的限界についてFDTD解析を用いて実施した。ナノ粒子の形状、粒子間距離及び積層構造の系統的な考察から、赤外域での共鳴反射は最大で85%に達し、0.15の低い熱放射率が達成された。 一方、最終年度の研究実施に向けて、本年度はITOナノ粒子薄膜の光学特性と電子濃度の相関について考察した。ITOナノ粒子内の電子濃度変化は表面プラズモンの共鳴波長を系統的に制御することができる。例えば、Sn濃度を0.1%から10%まで濃度変化させた場合、共鳴波長は6μmから1.8μmまで変位した。これに伴いITOナノ粒子薄膜の透過・反射特性も同様に変化した。つまり、ITOナノ粒子薄膜の電子濃度を変調させることで、赤外域の透過・反射性能が制御可能であることを確認した。この成果は、来年度で実施予定である固液界面技術を用いたITOナノ粒子薄膜の光学制御(スイッチ機能)に向けた予備的成果となる。上記の成果は、2022年度に実施した項目としておおむね順調に進歩している判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、ITOナノ粒子薄膜に固液界面技術を適用させて、赤外域の光学特性を電場制御することを目的とする。故に、今年度は固液界面技術による電子ドーピングを用い、ナノ粒子界面の電子状態変化に伴うプラズモン励起と熱輸送の機能制御を目指す。最初に、ナノ粒子内の電子状態制御:絶縁体・金属転移について考察する。電子ドーピングは、ナノ粒子内の電子濃度が固液界面による電荷蓄積に依存する。蓄積された電子濃度は、表面プラズモン分光と層厚に依存する。ナノ粒子への電荷蓄積と電子濃度は、電気化学分光を用いて行う。電気化学的操作(電圧走査)と表面プラズモンの光学性質(透過・反射)を評価し、インピーダンス測定(0.1 - 1MHz)から、 固液界面の電荷容量を決定する。測定試料は、作用電極、ナノ粒子薄膜、電解質層及び透明対極電極から構成される。 次に、プラズモン・熱輸送の外場制御と遮熱断熱性能について検討する。ナノ粒子界面のプラズモン・熱輸送の動的制御は、上記のエレクトロクロミック技術を用いて以下の観点から研究を推進する。①光学的な観点として、電気化学インピーダンス計測を装備した赤外分光を用いて、動的な電子状態変化と反射特性の関係を調査する。特に、日射熱や輻射熱に対する「遮熱・非遮熱」のON/OFF制御を実証する。②熱学的な観点として、時間分解熱反射計測を用いて、ナノ粒子間界面の電子状態変化と熱伝導(格子伝導と電子伝導)の関係を検討する。特に、熱拡散に起因する「断熱・非断熱」の制御を実証する。上記の固液界面を応用した電子ドーピングは、光熱動態の機能制御に向けた新しい研究視点となり、透明遮熱技術の外場操作に発展する。表面プラズモン(光学的)と熱輸送(熱学的)の制御により、新しい物理的(電場)操作を併せ持つ新しいウインドウクロミック技術の構築を行う。
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Research Products
(8 results)