2021 Fiscal Year Annual Research Report
熱フォノン流制御型人工磁気格子の開発と超高密度磁気ホログラム三次元記録への応用
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21H01368
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
リム パンボイ 豊橋技術科学大学, グローバルネットワーク推進センター, 教授 (40502597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 雄一 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20345953)
井上 光輝 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員教授 (90159997)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 磁気ホログラムメモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
体積磁気ホログラムの三次元磁化分布の解明:磁気ホログラムの磁化分布を評価するため、走査型磁気光学顕微鏡を開発した。これにより二光束干渉法により記録した磁気フリンジを観察した結果、干渉縞に対応した明瞭なファラデー回転角分布が観察できることがわかった。またフリンジの中央付近と端部では、干渉縞の深さの違いに起因すると考えられる、回転角の差があることがわかった。また回転角の大きさを評価した結果、磁気フリンジにおける回転角変化の大きさは、完全に磁化反転していると考える場合よりも小さく、浮遊磁界だけによる磁化反転だけでは、磁化反転が不十分であると考えられ、磁気アシスト記録などが必要と考えられる。 光人工磁気格子の形成:光人工磁気格子の記録層として適した希土類鉄ガーネット(Bi:RIG)の開発のため、その特性の組成依存性について検討した。Bi:RIGの鉄サイトをGaあるいはAlで置換した試料の特性を評価した結果、ファラデー回転角および消衰係数は置換量が大きくなるほど、その絶対値が小さくなることがわかった。しかし今回の組成範囲では、角形性が悪かったため、垂直磁化膜として角形性の改善を図る必要がある。またSiO2を熱拡散層とした光人工磁気格子の作成プロセスについても検討した結果、膜の剥離が生じやすく、成膜条件のさらなる検討が必要である。 体積磁気ホログラムのシフト多重性:多重記録・再生方式の検討にあたり、現状でのクロストークの影響について評価した。現在の記録条件では、直径約300μmの磁気フリンジがコリニア干渉光学系により記録される。その記録位置から、参照光のみを少しずつ位置をシフトさせながら照射して得られる再生光強度を評価した。その結果、クロストークによる輝度は、約100μmシフトすることで急速に減少し、約200μmシフトした位置でほぼ無視できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三次元磁化分布の解明に関して、当初予定のSPring8での測定は行っていないが、独自に開発した走査型磁気光学顕微鏡(MO顕微鏡)を用いた磁化分布の評価には成功しており、超解像画像解析により高画質化できる可能性も見出した。MO顕微鏡による解析ができれば、測定時間の制限無く解析が進められるため、三次元磁化分布の解析が加速できると期待される。 光人工磁気格子の形成に関して、体積的な磁気ホログラム形成のために必要な、適度な透過率を有する記録材料開発を主に進めた結果、基本的な置換効果については明らかになりつつある。また光人工磁気格子の形成プロセスにおいての課題も明らかになった。 多重記録・再生方式の検討に関して、多重記録・再生において重要なクロストークの基本的な特性は明らかにすることができ、単純に従来の記録方法を用いたのでは、クロストークの抑制に不十分であることが明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
三次元磁化分布の解明に関して、引き続きMO顕微鏡による磁気ホログラムの観察と解析を進める。特に微細な磁気フリンジに対しての超解像技術の開発を行うことで、精細な磁気フリンジの観察を実現するとともに、多重記録した際の、磁気フリンジへの影響を明らかにすることで、超高密度記録を実現するための、磁気ホログラムの記録方式開発にフィードバックを行う。 光人工磁気格子の形成に関して、体積記録に適した記録材料の開発を行うとともに、剥離などが生じにくい光人工磁気格子の形成プロセス開発を行う。そのためにSiO2、Al2O3、非磁性ガーネットなど熱拡散層材料との組み合わせと、成膜温度などの作製条件の再検討を行い、光人工磁気格子に適した材料と作製プロセスの最適化を行う。 多重記録・再生方式の検討に関して、昨年度の結果を踏まえ、クロストークの抑制方法について検討する。具体的には、シフトした位置に参照光を照射した際に元のホログラムからの再生条件を厳しくするように、参照光の形状や照射パターンを変えることで、クロストークの抑制を図る。その上で、実際に多重記録を行い、記録された磁気ホログラムの状態をMO顕微鏡で観察することで、多重記録による影響を明らかにし、効果的な多重記録条件を見出す。またこれらの検討は、まずは従来用いてきた単層膜で進めるが、並行して形成した光人工磁気格子記録媒体を用いた検討も進め、記録媒体を光人工磁気格子としたことによる効果、ならびに多重記録に適した光人工磁気格子の構造についても明らかにする。
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